耐糖能異常患者において，糖尿病や心血管イベントのリスク低下に対する速効型インスリン分泌促進薬の効果は明らかにされていない．

二重盲検無作為化臨床試験において，耐糖能異常と心血管疾患または心血管危険因子を有する 9,306 例を対象に，生活習慣改善プログラムに参加させるほか，2×2 要因デザインで，ナテグリニド投与（最大 60 mg を 1 日 3 回）またはプラセボ投与を行い，バルサルタンまたはプラセボを併用した．その後，中央値 5.0 年にわたり糖尿病の発症について参加者を追跡した（生存状況については中央値 6.5 年）．以下の 3 つの共通主要転帰の発生率に対するナテグリニドの効果を評価した；糖尿病の発症，中核的心血管転帰（心血管死，非致死的心筋梗塞，非致死的脳卒中，心不全による入院の複合），拡大心血管転帰（中核的複合心血管転帰の各要素，不安定狭心症による入院，動脈血行再建の複合）．

多重検定で補正後，ナテグリニド群ではプラセボ群と比較して，糖尿病の累積発症率（それぞれ 36%と 34%，ハザード比 1.07，95%信頼区間 [CI] 1.00～1.15，P＝0.05），中核的複合心血管転帰の発生率（7.9%と 8.3%，ハザード比 0.94，95% CI 0.82～1.09，P＝0.43），拡大複合心血管転帰の発生率（14.2%と 15.2%，ハザード比 0.93，95% CI 0.83～1.03，P＝0.16）はいずれも有意には低下しなかった．一方，ナテグリニド群では低血糖のリスクが増加した．

耐糖能異常と心血管疾患または心血管危険因子を有する人では，ナテグリニドを 5 年間投与しても，糖尿病発症率と共通主要複合心血管転帰の発生率は低下しなかった．（ClinicalTrials.gov 番号：NCT00097786）