April 22, 2010 Vol. 362 No. 16
糖尿病と心血管イベントの発生に対するバルサルタンの効果
Effect of Valsartan on the Incidence of Diabetes and Cardiovascular Events
The NAVIGATOR Study Group
レニン・アンジオテンシン系阻害薬により,耐糖能異常患者の糖尿病と心血管イベントのリスクが低下するかどうかは明らかにされていない.
2×2 要因デザインによる二重盲検無作為化臨床試験において,耐糖能異常と心血管疾患または心血管危険因子を有する患者 9,306 例を対象に,生活習慣改善プログラムに参加させるほか,バルサルタン投与(最大 160 mg/日)またはプラセボ投与を行った(それぞれナテグリニドまたはプラセボを併用).その後,中央値 5.0 年にわたり糖尿病の発症について患者を追跡した(生存状況については 6.5 年間).以下の 3 つの共通主要転帰の発生率に対するバルサルタンの効果を検討した;糖尿病の発症,拡大心血管複合転帰(心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心不全による入院,動脈血行再建,不安定狭心症による入院),中核的複合転帰(不安定狭心症と血行再建を除く).
糖尿病の累積発症率は,バルサルタン群で 33.1%であったのに対し,プラセボ群で 36.8%であった(バルサルタン群のハザード比 0.86,95%信頼区間 [CI] 0.80~0.92,P<0.001).バルサルタン群では,プラセボ群と比較して,拡大心血管転帰の発生率(14.5% 対 14.8%,ハザード比 0.96,95% CI 0.86~1.07,P=0.43),中核的心血管転帰の発生率(8.1% 対 8.1%,ハザード比 0.99,95% CI 0.86~1.14,P=0.85)のいずれも有意には低下しなかった.
耐糖能異常と心血管疾患または心血管危険因子を有する患者では,生活習慣改善指導に加えてバルサルタンを 5 年間使用することで,糖尿病発症率は相対的に 14%低下したが,心血管イベント発生率は低下しなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT 00097786)