腹部大動脈瘤に対する血管内治療と開腹手術の比較
Endovascular versus Open Repair of Abdominal Aortic Aneurysm
The United Kingdom EVAR Trial Investigators
腹部大動脈瘤に対する血管内治療の長期転帰を開腹手術と比較したデータはほとんどない.
1999~2004 年に英国の 37 病院において,大きな腹部大動脈瘤(直径 5.5 cm 以上)を有する患者 1,252 例を,626 例ずつ血管内治療群と開腹手術群に無作為に割り付けた.死亡率,グラフト関連合併症発生率,再介入率,医療資源利用について,患者を 2009 年末まで追跡した.ロジスティック回帰分析と Cox 回帰分析を用いて両群の転帰を比較した.
30 日手術死亡率は,血管内治療群 1.8%,開腹手術群 4.3%であった(開腹手術に対する血管内治療の補正オッズ比 0.39,95%信頼区間 [CI] 0.18~0.87,P=0.02).血管内治療群の動脈瘤関連死亡率には早期に有益性が認められたが,試験終了時には認められなくなり,その原因の少なくとも一部は致死的な血管内グラフトの破裂(補正ハザード比 0.92,95% CI 0.57~1.49,P=0.73)であった.追跡終了時までに,全死因死亡率における 2 群間の差は有意ではなくなった(補正ハザード比 1.03,95% CI 0.86~1.23,P=0.72).血管内治療群では,グラフト関連合併症発生率と再介入率がより高く,また,新規の合併症が無作為化後 8 年目まで発生し,総医療費はより高くなった.
この大規模無作為化試験では,腹部大動脈瘤に対する血管内治療は,開腹手術に比べて手術死亡率の有意な低下に関連していた.しかし,長期の全死亡率と動脈瘤関連死亡率に差は認められなかった.血管内治療は,グラフト関連合併症発生率と再介入率の上昇に関連し,より費用がかかった.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN55703451)