開腹手術が身体的に不適応な患者における大動脈瘤の血管内治療
Endovascular Repair of Aortic Aneurysm in Patients Physically Ineligible for Open Repair
The United Kingdom EVAR Trial Investigators
腹部大動脈瘤に対する血管内治療は,元来開腹手術が身体的に不適応と判断された患者のために開発されたものである.血管内治療により,これらの患者における死亡率が低下するかどうかに関するデータは不足している.
1999~2004 年に英国の 33 病院において,開腹手術が身体的に不適応と判断された大きな腹部大動脈瘤(直径 5.5 cm 以上)を有する患者 404 例のうち,197 例を血管内治療を受ける群,207 例を介入を行わない無治療群に無作為に割り付けた.死亡率,グラフト関連合併症発生率,再介入率,費用について,患者を 2009 年末まで追跡した.Cox 回帰分析を用いて両群の転帰を比較した.
血管内治療群の 30 日手術死亡率は 7.3%であった.無治療群における動脈瘤破裂の全発生率は,100 人年あたり 12.4(95%信頼区間 [CI] 9.6~16.2)であった.動脈瘤関連死亡率は血管内治療群のほうが低かったが(補正ハザード比 0.53,95% CI 0.32~0.89,P=0.02),この優位性は全死亡率に利益をもたらすことはなかった(補正ハザード比 0.99,95% CI 0.78~1.27,P=0.97).最初の 6 年間に,血管内治療群の全生存例の 48%でグラフト関連合併症が発生し,27%で再介入が必要となった.追跡期間 8 年間で血管内治療にかかった費用は,無治療と比較してかなり高額であった(費用の差 9,826 ポンド [14,867 米ドル],95% CI 7,638~12,013 [11,556~18,176]).
腹部大動脈瘤を有し,開腹手術が身体的に不適応と判断された患者を対象としたこの無作為化試験では,血管内治療は,無治療と比較して,動脈瘤関連死亡率の有意な低下に関連していたが,全死因死亡率に低下は認められなかった.血管内治療のほうがグラフト関連合併症発生率と再介入率が高く,より費用がかかった.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN55703451)