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September 16, 2010 Vol. 363 No. 12

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早期の急性呼吸窮迫症候群に対する神経筋遮断薬
Neuromuscular Blockers in Early Acute Respiratory Distress Syndrome

L. Papazian and Others

背景

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対して人工換気を受けている患者では,神経筋遮断薬により,酸素化が改善し人工呼吸器関連肺損傷が軽減する可能性があるが,筋力低下が生じる可能性もある.われわれは早期の重症 ARDS 患者を対象に,神経筋遮断薬を用いた 2 日間の治療後の臨床転帰を評価した.

方 法

多施設共同二重盲検試験において,48 時間以内に重症 ARDS を発症し,集中治療室(ICU)に入室した患者 340 例を,48 時間にわたりシサトラクリウムベシル酸塩(cisatracurium besylate)を投与する群(178 例)と,プラセボを投与する群(162 例)のいずれかに無作為に割り付けた.重症 ARDS の定義は,動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素分画(FIO2)比 150 未満,呼気終末陽圧 5 cmH2O 以上,1 回換気量 6~8 mL/kg予測体重とした.主要転帰は,Cox モデルを用いて,事前に規定した共変量とベースラインの群間差で補正した退院前もしくは試験登録後 90 日以内の死亡患者の割合とした.

結 果

ベースラインの PaO2/FIO2 比,プラトー圧,簡略急性生理スコア II による補正後,プラセボ群と比較したシサトラクリウム群の 90 日死亡のハザード比は 0.68(95%信頼区間 [CI] 0.48~0.98)であった(P=0.04).90 日粗死亡率は,シサトラクリウム群 31.6%(95% CI 25.2~38.8),プラセボ群 40.7%(95% CI 33.5~48.4)であった(P=0.08).28 日死亡率は,シサトラクリウム群 23.7%(95% CI 18.1~30.5),プラセボ群 33.3%(95% CI 26.5~40.9)であった(P=0.05).ICU における不全麻痺の発生率に 2 群間で有意差はなかった.

結 論

重症 ARDS 患者では,神経筋遮断薬の早期投与により,筋力低下が増加することなく,補正 90 日生存率は改善し,人工呼吸器の離脱期間も延長した.(Assistance Publique–Hôpitaux de Marseille,フランス保健省の Programme Hospitalier de Recherche Clinique Régional 2004-26 から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00299650)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 1107 - 16. )