September 16, 2010 Vol. 363 No. 12
骨髄線維症における JAK1,JAK2 阻害薬 INCB018424 の安全性と有効性
Safety and Efficacy of INCB018424, a JAK1 and JAK2 Inhibitor, in Myelofibrosis
S. Verstovsek and Others
骨髄線維症はフィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍であり,血球減少,脾腫,QOL の低下,生存期間の短縮と関連している.骨髄線維症患者の約半数は,この疾患の病態生理に関与する Janus キナーゼ 2 遺伝子(JAK2)に機能獲得型変異(V617F)を有している.INCB018424 は,Janus キナーゼ 1(JAK1)と JAK2 の強力な選択的阻害薬である.
JAK2 V617F 陽性または JAK2 V617F 陰性の,原発性骨髄線維症,本態性血小板血症に続発した骨髄線維症,真性多血症に続発した骨髄線維症の患者を対象に,INCB018424 の第 1/2 相試験を行った.
153 例が中央値 14.7 ヵ月以上にわたり INCB018424 の投与を受けた.最初の用量漸増相において,可逆的な血小板減少に基づき,25 mg 1 日 2 回または 100 mg 1 日 1 回が最大耐用量とされた.野生型 JAK2 を有する患者と JAK2 V617F 変異体を有する患者で,JAK シグナル伝達マーカーであるリン酸化シグナル伝達性転写因子 3(STAT3)の用量依存的な抑制が示された.第 2 相試験でほかの用量を検討した結果,15 mg 1 日 2 回で投与を開始し,その後患者ごとに用量を調節するのがもっとも有効かつ安全なレジメンであることが示された.この用量では,33 例中 17 例(52%)で迅速な客観的奏効(脾腫が 50%以上縮小)が得られ,12 ヵ月以上持続した.またこの治療は,10%未満の患者でグレード 3 または 4 の有害事象(主に骨髄抑制)と関連していた.体重減少,疲労,寝汗,瘙痒感などの衰弱症状を呈する患者では,それらの症例に迅速な改善が認められた.臨床上の有益性は,骨髄線維症において上昇することの多い,血中炎症性サイトカイン濃度の顕著な低下と関連していた.
承認された治療法のない骨髄線維症患者において,INCB018424 は顕著かつ持続的な臨床上の有益性と関連していた.(Incyte 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00509899)