September 16, 2010 Vol. 363 No. 12
慢性閉塞性肺疾患の増悪に対する感受性
Susceptibility to Exacerbation in Chronic Obstructive Pulmonary Disease
J.R. Hurst and Others
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では増悪が重要なイベントであることは知られているが,その頻度,決定因子,影響についての理解は不十分である.われわれは,大規模な観察コホート集団において,COPD には重症度とは独立して高頻度に増悪する表現型が存在するという仮説を検証した.
予測可能な代替エンドポイントを同定するための COPD の縦断的評価(Evaluation of COPD Longitudinally to Identify Predictive Surrogate Endpoints:ECLIPSE)研究に登録された患者 2,138 例を対象に,増悪の頻度やさまざまな因子との関連を解析した.増悪は,医療提供者により抗菌薬または副腎皮質ステロイド(あるいはその両方)が処方されたイベント,もしくは入院の原因となったイベント(重度の増悪)と定義した.増悪の頻度は 3 年間観察した.
COPD の重症度が上昇するにつれ,増悪の頻度は上昇し,重症化した.追跡調査 1 年目の増悪発生率は,慢性閉塞性肺疾患に対するグローバルイニシアチブ [GOLD] 分類で II 期の COPD 患者 1 例あたり 0.85,III 期 では 1.34,IV 期では 2.00 であった.全体で増悪は,II 期の 22%,III 期の 33%,IV 期の 47%で高頻度(追跡調査 1 年目に 2 回以上)にみられた.GOLD 分類のいずれの病期においても,増悪を予測する唯一の強力な因子は,増悪の既往であった.高頻度の増悪を呈する表現型は,3 年間で比較的安定しているようであり,過去に治療を受けたイベントに関する患者の記憶に基づいて予測できると考えられた.表現型は,より重度の疾患や過去の増悪と関連していたのに加えて,胃食道逆流または胸やけの既往,QOL の低下,白血球数の上昇とも独立して関連していた.
COPD が進行するにつれ増悪の頻度と重症度は上昇するが,その発生率は独立した感受性の表現型を反映しているとみられる.この知見は,疾患の重症度を問わず,増悪の予防戦略における標的設定に対して意義がある.(GlaxoSmithKline 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00292552)