September 30, 2010 Vol. 363 No. 14
関節リウマチに対する経口脾臓チロシンキナーゼ(Syk)阻害薬
An Oral Spleen Tyrosine Kinase (Syk) Inhibitor for Rheumatoid Arthritis
M.E. Weinblatt and Others
脾臓チロシンキナーゼ(Syk)は,免疫シグナル伝達の重要な調節物質である.この第 2 相試験の目的は,メトトレキサート治療にもかかわらず活動性の関節リウマチを有する患者を対象として,経口 Syk 阻害薬 R788 の有効性と安全性を評価することである.
長期のメトトレキサート治療にもかかわらず活動性の関節リウマチを有する患者 457 例を,6 ヵ月にわたる二重盲検プラセボ対照試験に登録した.主要転帰は,6 ヵ月の時点での米国リウマチ学会(ACR)20 改善率(圧痛関節数,腫脹関節数が 20%以上減少し,ほかの 5 項目のうち 3 項目以上でも 20%以上の改善を示す)とした.
R788 100 mg 1 日 2 回投与群と 150 mg 1 日 1 回投与群はいずれも,6 ヵ月の時点でプラセボ群よりも有意に優れていた(ACR 20 改善率 67%,57%.これに対しプラセボ群 35%;各 R788 群とプラセボとの比較で P<0.001).50%以上の改善を示す,ACR 50 改善率についても有意に優れていた(43%,32%に対しプラセボ群 19%;R788 100 mg 群とプラセボ群との比較で P<0.001,150 mg 群とプラセボ群との比較で P=0.007).また,ACR 70 改善率についても有意に優れていた(28%,14%に対しプラセボ群 10%;R788 100 mg 群とプラセボ群との比較で P<0.001,150 mg 群とプラセボ群との比較で P=0.34).治療第 1 週の終わりまでに,臨床的に有意な効果が認められた.有害事象には,下痢(R788 100 mg 群 19% 対 プラセボ群 3%),上気道感染(14% 対 7%),好中球減少(6% 対 1%)などがみられた.ベースラインから 1 ヵ月目までに,R788 群では約 3 mmHg の収縮期血圧上昇がみられたのに対し,プラセボ群では 2 mmHg の収縮期血圧低下がみられ,降圧治療の開始または変更を要した患者は R788 群 23%に対しプラセボ群 7%であった.
この第 2 相試験において,Syk 阻害薬により関節リウマチ患者の疾患活動性は低下したが,下痢,高血圧,好中球減少などの有害事象が認められた.関節リウマチ患者に対する Syk 阻害療法の安全性と有効性をさらに評価するためには,追加の試験が必要と考えられる.(Rigel 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00665925)