The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

November 4, 2010 Vol. 363 No. 19

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫に対するエベロリムス
Everolimus for Subependymal Giant-Cell Astrocytomas in Tuberous Sclerosis

D.A. Krueger and Others

背景

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫に対する標準的治療法は,脳神経外科手術による切除である.哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)は結節性硬化症に関与する遺伝子産物によって調節される蛋白であり,この蛋白を阻害するエベロリムスの使用が,代替療法となる可能性がある.

方 法

上衣下巨細胞性星細胞腫の継続的な増殖がみられる 3 歳以上の患者を,非盲検試験に適格とした.主要有効性エンドポイントは,ベースラインから試験 6 ヵ月のあいだの上衣下巨細胞性星細胞腫の体積の変化とした.エベロリムスを 3.0 mg/m2 体表面積で経口投与し,目標トラフ濃度を 5~15 ng/mL とした.

結 果

患者 28 例を登録した.第三者による中央判定での評価によると,エベロリムス療法は原発性上衣下巨細胞性星細胞腫の体積の臨床的に有意な減少に関連し(ベースラインと 6 ヵ月の比較で P<0.001),30%以上の減少は 21 例(75%),50%以上の減少は 9 例(32%)で認められた.顕著な腫瘍縮小が 3 ヵ月以内に認められ,維持された.新規病変,水頭症の悪化,頭蓋内圧亢進の所見,上衣下巨細胞性星細胞腫に対する外科的切除やその他の治療の必要性はなかった.24 時間ビデオ脳波のデータが入手可能であった 16 例において,試験期間 6 ヵ月でのてんかん発作の頻度は(試験開始前の 6 ヵ月と比較して)9 例で減少し,6 例で変化がなく,1 例で増加した(変化の中央値はてんかん発作 -1 回,P=0.02).妥当性の検証された小児てんかん QOL 質問票(0~100 で表され,スコアが高いほど QOL が良好であることを示す)での平均(±SD)スコアは,3 ヵ月(63.4±12.4),および 6 ヵ月(62.1±14.2)の時点で,ベースライン(57.8±14.0)と比べて改善していた.グレード 3 の治療に関連した副鼻腔炎,肺炎,ウイルス性気管支炎,歯性感染症,口内炎,白血球減少はそれぞれ 1 例報告された.

結 論

エベロリムス療法は,上衣下巨細胞性星細胞腫の体積とてんかん発作の頻度の顕著な減少に関連しており,一部の症例では脳神経外科手術による切除に代わる治療選択肢となる可能性があるが,長期研究が必要である.(Novartis 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00411619)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 1801 - 11. )