November 25, 2010 Vol. 363 No. 22
妊娠初期のプロトンポンプ阻害薬使用と先天異常のリスク
Use of Proton-Pump Inhibitors in Early Pregnancy and the Risk of Birth Defects
B. Pasternak and A. Hviid
妊娠中の胃食道逆流症状はよくみられるが,妊娠初期のプロトンポンプ阻害薬(PPI)曝露に伴う先天異常のリスクについては,データが限られている.
1996 年 1 月~2008 年 9 月にデンマークで出生したすべての児を対象としたコホート研究において,妊娠中の PPI 曝露と,主要先天異常のリスクとの関連を評価した.PPI 曝露(調剤),先天異常,潜在的交絡因子に関する個人レベルの情報を含む全国登録を用いてデータをリンクさせた.生後 1 年以内に診断された主要先天異常を,欧州先天異常サーベイランス(EUROCAT)の標準化された分類体系に従って分類した.主要解析では,PPI の使用期間を受胎前 4 週~妊娠 12 週と,妊娠 0~12 週(妊娠第 1 期)に分けて評価した.
生児出生 840,968 例のうち,5,082 例が受胎前 4 週~妊娠第 1 期終了のあいだに PPI に曝露されていた.この期間に PPI に曝露された母親から出生した児では,主要先天異常は 174 例(3.4%)に認められたのに対し,曝露されていない母親から出生した児では 21,811 例(2.6%)であった(補正後の有病オッズ比 1.23,95%信頼区間 [CI] 1.05~1.44).妊娠第 1 期の曝露に限定した解析では,PPI に曝露された児 3,651 例のうち,主要先天異常は 118 例(3.2%)で認められ,補正後の有病オッズ比は 1.10(95% CI 0.91~1.34)であった.妊娠第 1 期の PPI 曝露に関する副次的解析や,PPI の調剤を受け,理論的に妊娠第 1 期の曝露をもたらしうる量を服用した女性から出生した児に限定した解析では,先天異常のリスクの有意な増加は認められなかった.
大規模コホート集団において,妊娠第 1 期の PPI 曝露に関連する主要先天異常のリスクの有意な増加は認められなかった.(デンマーク医学研究評議会,ルンドベック財団から研究助成を受けた.)