December 23, 2010 Vol. 363 No. 26
院内死亡率の算出におけるばらつき
Variability in the Measurement of Hospital-wide Mortality Rates
D.M. Shahian and Others
病院のケアの質の評価に院内死亡率を用いる国がいくつかあるが,その有用性には疑問がある.マサチューセッツ州の政策当局より,病院の質の評価に用いられているこの集合的な死亡指標の計算方法を評価するよう要請された.
マサチューセッツ医療保険政策局は,2004 年 10 月 1 日~2007 年 9 月 30 日のマサチューセッツ州の急性期病院における退院 2,528,624 件について,同一の情報を民間企業 4 社に提供した.各企業は独自のリスク補正アルゴリズムを適用し,退院ごとの予測院内死亡率と,病院ごとの実際の院内死亡率と期待死亡率を算出した.4 つの計算方法それぞれに組み入れられた退院および病院の数と特性を比較した.またそれぞれの計算方法について,各病院の標準化死亡比と,死亡率が期待値よりも高いか低いかによる病院の分類も比較した.
それぞれの計算方法に組み入れられた退院の割合は 28~95%と異なり,組み入れられた患者の診断の重症度には大きなばらつきがみられた.退院の組入れ基準のため,2 つの計算方法で算出された院内死亡率(4.0%と 5.9%)は州内平均(2.1%)の 2 倍であった.対相関(Pearson 相関係数)による退院ごとの期待死亡率は 0.46~0.70 であった.病院成績の分類には大きなばらつきがあり,ときには完全に不一致であった.2006 年では,1 つの方法により院内死亡率が期待値よりも高いと分類された 28 病院のうち,12 病院はほかの 1 つ以上の方法で期待値よりも低いと分類された.
院内死亡率の計算に一般的に用いられる 4 つの方法により,大幅に異なる結果が得られた.これは,米国内で標準化された組入れ基準・除外基準がないこと,統計的手法が異なること,院内死亡率とケアの質との関連に関する仮説に根本的な欠陥があることに起因する可能性がある.(マサチューセッツ医療保険政策局から研究助成を受けた.)