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July 22, 2010 Vol. 363 No. 4

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肺機能予測における遺伝的系統
Genetic Ancestry in Lung-Function Predictions

R. Kumar and Others

背景

肺機能の予測式の標準的な基準を決定するためには,自己申告による人種や民族の分類が用いられる.遺伝学的にアフリカ系であると決定付けられる割合が肺機能と関連しているか,また,遺伝的系統を予測に用いることがアフリカ系アメリカ人の肺機能予測を向上させるかを明らかにした.

方 法

アフリカ系アメリカ人であると自己申告した,若年成人における冠動脈リスクの発症(Coronary Artery Risk Development in Young Adults:CARDIA)研究への参加者 777 例の祖先の系統を決定し,線形回帰モデルから肺機能と人種・民族系統の関連を評価した.また,アフリカ系アメリカ人であると自己申告した被験者から成る 2 つの独立したコホートを対象に同様のデータ解析を行った:健康・加齢・体組成(Health, Aging, and Body Composition:HABC)研究の参加者 813 例,心血管健康研究(Cardiovascular Health Study:CHS)の参加者 579 例.肺機能検査に対する次の 2 種類のモデルの適合度を比較した:通常の予測式で用いられる共変量に基づいたモデル,祖先の系統を組み込んだモデル.また,2 つの喘息研究の集団を対象に,祖先の系統を組み込んだモデルが疾患重症度の分類に及ぼす影響についての評価も行った.

結 果

CARDIA のコホートでは,アフリカ系であることは 1 秒量(FEV1)および努力肺活量(FVC)と逆相関していた.これらの関係は HABC と CHS のコホートでも認められた.肺機能を予測するうえでは,祖先の系統を組み込んだモデルのほうが標準的なモデルよりデータへの適合度が高かった.祖先の系統を組み込んだモデルは,4~5%の被験者の喘息重症度(1 秒率の予測値に基づく) を再分類した.

結 論

自己申告による人種にのみ基づく現在の予測式では,アフリカ系アメリカ人と認識する被験者の肺機能が不正確に推定される可能性がある.標準式に祖先の系統を組み込むと,肺機能予測が向上し,疾患重症度をより正確に分類することができる可能性が示された.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 321 - 30. )