特発性アカラシアに対するバルーン拡張術と腹腔鏡下 Heller 筋層切開術との比較
Pneumatic Dilation versus Laparoscopic Heller's Myotomy for Idiopathic Achalasia
G.E. Boeckxstaens and Others
アカラシアの治療法として,腹腔鏡下 Heller 筋層切開術(Laparoscopic Heller's Myotomy:LHM)はバルーン拡張術より優れていると考える専門医は多く,アカラシア治療に LHM が選択されることが増えている.
アカラシアと新たに診断された患者を,バルーン拡張術または LHM+Dor 噴門形成術に無作為に割り付けた.Eckardt スコア(0~12,スコアが高いほど症状が強い)を用いて,体重減少,嚥下障害,胸骨背部痛,逆流などの症状を評価した.主要転帰は,年 1 回の追跡評価における治療成功(Eckardt スコアが 3 以下に低下)とした.副次的転帰は,再治療の必要性,下部食道括約部の圧,食道バリウム造影における一定時間の食道排出能,QOL,合併症発生率などとした.
201 例をバルーン拡張術群(95 例)または LHM 群(106 例)に無作為に割り付けた.平均追跡期間は 43 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 40~47 ヵ月)であった.intention-to-treat 解析では,主要転帰に 2 群間で有意差は認められなかった.治療成功率は,バルーン拡張術群で 1 年後の追跡調査時 90%,2 年後の追跡調査時 86%であったのに対し,LHM 群では 93%,90%であった(P=0.46).2 年後の追跡調査時において,下部食道括約部の圧(LHM 群 10 mmHg [95% CI 8.7~12],バルーン拡張術群 12 mmHg [95% CI 9.7~14],P=0.27),バリウム造影剤柱の高さにより評価した食道排出能(LHM 群 1.9 cm [95% CI 0~6.8],バルーン拡張術群 3.7 cm [95% CI 0~8.8],P=0.21),QOL に,有意な群間差は認められなかった.per-protocol 解析でも同様の結果が得られた.バルーン拡張術施行中の食道穿孔は患者の 4%で発生し,LHM 施行中の粘膜裂傷は 12%で発生した.異常な食道内酸曝露は,バルーン拡張術群の 15%と LHM 群の 23%で認められた(P=0.28).
2 年後の追跡調査時に,LHM をバルーン拡張術と比較しても,優れた治療成功率は得られなかった.(European Achalasia Trial Netherlands Trial Register 番号:NTR37,Current Controlled Trials 番号:ISRCTN56304564)