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January 20, 2011 Vol. 364 No. 3

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機能性視床下部性無月経の遺伝学的基盤
A Genetic Basis for Functional Hypothalamic Amenorrhea

L.M. Caronia and Others

背景

機能性視床下部性無月経は,一般に過度の運動や栄養不良,心理的苦痛などのストレッサーによって誘発される,ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)欠損症の可逆的病態である.女性ではこれらのストレッサーによる視床下部―下垂体―性腺軸の抑制に対する感受性が個々で異なるが,それが視床下部性無月経の遺伝的素因を反映しているかどうかはわかっていない.われわれは,先天性の GnRH 欠損症である特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関与する遺伝子の変異が,視床下部性無月経に関連しているという仮説を立てた.

方 法

視床下部性無月経の女性 55 例において,特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関連する遺伝子のコード配列を解析し,同定された変異の in vitro 試験を行った.

結 果

視床下部性無月経患者 55 例中 7 例で 6 個のヘテロ接合変異;線維芽細胞増殖因子受容体 1 遺伝子 FGFR1 の変異体 2 個(G260E,R756H),プロキネチシン受容体 2 遺伝子 PROKR2 の変異体 2 個(R85H,L173R),GnRH 受容体遺伝子 GNRHR の変異体 1 個(R262Q),カルマン症候群 1 配列遺伝子 KAL1 の変異体 1 個(V371I)が同定された.月経周期が正常な対照 422 例のコホート集団では変異は検出されなかった.in vitro 試験により,すでに示されている PROKR2 L173R と GNRHR R262Q と同様に,FGFR1 G260E,FGFR1 R756H,PROKR2 R85H も機能喪失変異であることが示された.

結 論

視床下部性無月経の女性には,特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関連する遺伝子のまれな変異体が認められることから,これらの変異が,視床下部性無月経の特徴である GnRH 分泌の機能欠損に女性が不定の感受性を示すことに関与している可能性が示唆される.今回の観察結果は,頻度の高い多因子疾患にはまれな変異体が寄与していることを示すエビデンスとなる.(米国ユニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健・人間発達研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00494169)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 364 : 215 - 25. )