September 29, 2011 Vol. 365 No. 13
認知機能に問題を有する介護施設入居者の終末期における施設・病院間の転院
End-of-Life Transitions among Nursing Home Residents with Cognitive Issues
P. Gozalo and Others
認知障害・機能障害が進行した患者において,死を迎える直前の数ヵ月間の施設・病院間の転院は,負担を伴い,臨床的利益は限られている可能性がある.
認知障害・機能障害が進行し,死亡する 120 日前に介護施設に入居していたメディケア受給者の死亡例の施設・病院間の転院について調査するため,2000~07 年のメディケアの最小データセットと請求記録から得た全米規模のデータを関連付けた.死亡前の 3 日間に転院が発生した場合,死亡前の 90 日間に発生した入院の前後で介護施設が異なった場合,死亡前の 90 日間に入院が複数回発生した場合に,その転院を「負担を伴う」と定義した.これらの負担を伴う転院の発生率におけるばらつきを説明するさまざまな要因も検証した.負担を伴う転院の地域別発生率と,胃管の挿入,死亡前の 1 ヵ月間における集中治療室(ICU)入室,ステージ IV の褥瘡,死亡前の 3 日間におけるホスピス入所の発生率とのあいだに関連がみられるかどうかを検討した.
介護施設入居者の死亡例 474,829 例のうち,19.0%で負担を伴う転院が 1 回以上行われていた(範囲はアラスカ州の 2.1%からルイジアナ州の 37.5%).補正解析では,黒人,ヒスパニック系,事前指示書を作成していない人でリスクが高かった.負担を伴う転院について最高五分位群であった地域の介護施設入居者では(最低五分位群と比較して),胃管の使用(補正リスク比 3.38),死亡前の 1 ヵ月間における ICU 入室(補正リスク比 2.10),ステージ IV の褥瘡(補正リスク比 2.28),死亡直前のホスピス入所(補正リスク比 1.17)の発生率が有意に高かった.
負担を伴う施設・病院間の転院の頻度は高く,州によってばらつきがあり,終末期ケアの質が低いことを示す指標と関連している.(米国国立老化研究所から研究助成を受けた.)