November 10, 2011 Vol. 365 No. 19
ドイツにおけるモヤシに関連した大腸菌 O104:H4の集団発生
German Outbreak of Escherichia coli O104:H4 Associated with Sprouts
U. Buchholz and Others
2011 年 5 月,ドイツで,志賀毒素産生性大腸菌(Escherichia coli)O104:H4 による溶血性尿毒症症候群の大規模な集団発生が起きた.感染源は特定されていなかった.
感染源の特定を目的として,マッチさせた症例対照研究,レシピに基づくレストランのコホート研究に加え,環境調査,遡及調査,前向き調査を行った.
症例対照研究では,溶血性尿毒症症候群 26 例と対照 81 例を対象とした.疾患の集団発生は,単変量解析ではモヤシの摂取(マッチさせたオッズ比 5.8,95%信頼区間 [CI] 1.2~29)と,多変量解析ではモヤシおよびキュウリの摂取と関連していた.症例の 25%がモヤシを,88%がキュウリを食べていた.レストラン K の客 10 グループに行われたレシピに基づく調査では,対象 152 人のうち,31 例(20%)が出血性下痢または志賀毒素産生性大腸菌との関連が確認された下痢を発症した.モヤシを出された客は,発症する確率が有意に高かった(相対リスク 14.2,95% CI 2.6~∞).モヤシの摂取によって症例の 100%が説明された.レストラン K にモヤシを供給した販売業者のモヤシに関する追跡調査により,生産者 A にたどり着いた.取引関係が明らかな 41 例の症例集積群は,すべて生産者 A によって説明することができた.集団発生株は,関連が示唆されるロットの種子では同定することができなかった.
この調査により,もっとも可能性の高い集団発生の媒体としてモヤシが特定された.このことから,調査対象者が摂取したものを思い出す際に見落とす可能性のある食品を考慮に入れる必要があることが強調されている.