November 10, 2011 Vol. 365 No. 19
ドイツにおける志賀毒素産生性大腸菌 O104:H4 の集団発生に関する疫学プロファイル
Epidemic Profile of Shiga-Toxin-Producing Escherichia coli O104:H4 Outbreak in Germany
C. Frank and Others
われわれは,2011 年 5 月,6 月,7 月にドイツで起きた志賀毒素産生性大腸菌(Escherichia coli)による胃腸炎と溶血性尿毒症症候群の集団発生について報告する.モヤシの摂取が,もっとも可能性が高い感染媒体として同定された.
ドイツにおける志賀毒素産生性大腸菌による胃腸炎および溶血性尿毒症症候群の集団発生についての報告データと,ハンブルク大学医療センター(HUMC)を受診した患者の臨床情報を分析した.集団発生症例は,血清型 O104 または血清型不明の志賀毒素産生性大腸菌に感染した患者で,溶血性尿毒症症候群または胃腸炎の発症が報告された例とし,発症時期が 2011 年 5 月 1 日~7 月 4 日であることと定義した.
3,816 例(死亡 54 例を含む)の症例がドイツで報告され,うち 845 例(22%)が溶血性尿毒症症候群を発症した.集団発生はドイツ北部を中心に起こり,5 月 21 日~22 日がピークであった.溶血性尿毒症症候群を発症した患者の大部分は成人であり(88%,年齢中央値 42 歳),女性が多かった(68%).推定潜伏期の中央値は 8 日で,下痢の発症から溶血性尿毒症症候群の発現までの期間は中央値で 5 日であった.HUMC で前向きに追跡された 59 例のうち,12 例(20%)が溶血性尿毒症症候群を発症したが,性別や報告された初発徴候・症状による有意差は認められなかった.タイピングにより,集団発生株は基質特異性拡張型 β ラクタマーゼを産生する,腸管凝集性志賀毒素産生性大腸菌 O104:H4 であることが示された.
まれな大腸菌株によって引き起こされたこの集団発生では,溶血性尿毒症症候群は主に成人で発症しており,女性の症例が大半を占めていた.溶血性尿毒症症候群を発症した例は,同定された症例の 20%を超えていた.