November 10, 2011 Vol. 365 No. 19
重症型アルコール性肝炎に対する早期肝移植
Early Liver Transplantation for Severe Alcoholic Hepatitis
P. Mathurin and Others
重症型アルコール性肝炎患者に肝移植を検討する前には,通常 6 ヵ月の禁酒が必要とされる.内科的治療に反応しない肝炎患者の 6 ヵ月生存率は約 30%である.アルコール性肝炎による死亡のほとんどは 2 ヵ月以内に発生することから,早期肝移植は魅力的ではあるが,意見が分かれている.
7 施設から,早期肝移植の対象となる患者を選択した.アルコール性肝炎を過去に発症したことがなく,Lille モデル(0~1 のスコアを算出し,0.45 以上は内科的治療に反応がなく,移植しなければ死亡リスクが高いことを示す)のスコアが 0.45 以上であるか,あるいは内科的治療を行っても肝機能の急激な悪化が認められる患者を対象とした.さらに,支えとなる家族がおり,重症の併存疾患がなく,禁酒すると約束した患者を選択した.早期肝移植施行患者と,マッチさせた非施行患者とで生存率を比較した.
全体で,死亡リスクの高い重症型アルコール性肝炎患者 26 例(Lille スコア中央値 0.88)が選択され,内科的治療に反応しなくなったあと中央値 13 日以内に肝移植リストに載せられた.選択された患者は,重症型アルコール性肝炎で入院した患者の 2%未満であった.各施設において,利用可能な移植片の 2.9%が早期移植に用いられた.6 ヵ月の累積生存率(±SE)は,早期移植施行例において非施行例よりも高かった(77±8% 対 23±8%,P<0.001).早期移植によるこの利益は,2 年の追跡期間を通して維持された(ハザード比 6.08,P=0.004).3 例が,それぞれ移植後 720 日目,740 日目,1,140 日目に飲酒を再開した.
重症型アルコール性肝炎をはじめて発症し,内科的治療に反応しない患者では,早期肝移植により生存率を改善することが可能である.(フランス国立消化器病学会から研究助成を受けた.)