HIV-1 ワクチン有効性試験の免疫相関要因の解析
Immune-Correlates Analysis of an HIV-1 Vaccine Efficacy Trial
B.F. Haynes and Others
RV144 試験では,ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)に対するワクチンレジメンの推定有効率は 31.2%であった.感染リスクに対する抗体および細胞性免疫の相関要因を同定するため,症例対照解析を行った.
RV144 ワクチン接種者の血液検体を用いたパイロット研究において,事前に規定した基準に合致した 17 種類の抗体アッセイ法または細胞アッセイ法の中から 6 種類を,T 細胞,IgG 抗体,IgA 抗体の反応が感染リスクの変化に果たす役割を明らかにするための主要解析に選択した.ワクチンを接種して感染した 41 例と感染しなかった 205 例の最終接種から 2 週間後に採取した検体を用いてアッセイを行い,免疫反応変数によって 42 ヵ月間の追跡調査中の HIV-1 感染を予測できるかどうかを検討した.
6 種類の主要変数のうち 2 種類が感染リスクと有意に相関しており,IgG 抗体の HIV-1 エンベロープ蛋白(Env)の可変領域 1 および 2(V1V2)への結合が HIV-1 感染率と逆相関し(1 SD 上昇あたりの推定オッズ比 0.57,P=0.02,q=0.08),血漿 IgA 抗体の Env への結合が感染率と直接相関していた(1 SD 上昇あたりの推定オッズ比 1.54,P=0.03,q=0.08).V1V2 抗体価が低いことも Env 特異的 IgA 抗体価が高いことも,プラセボ群より感染率が高いこととは関連しなかった.副次的解析から,Env 特異的 IgA 抗体によって防御能をもつ可能性のある抗体の効果が減弱するかもしれないことが示された.
この免疫相関要因の研究から,V1V2 抗体が HIV-1 感染に対する防御効果に寄与した可能性がある一方で,Env 特異的 IgA 抗体高値によって防御能をもつ効果が減弱した可能性があるという仮説が得られた.RV144 ワクチンよりも高い V1V2 抗体価と低い Env 特異的 IgA 抗体価を誘導するデザインのワクチンであれば,HIV-1 感染に対する有効性が改善された可能性がある.