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May 17, 2012 Vol. 366 No. 20

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大顆粒リンパ球性白血病における体細胞 STAT3変異
Somatic STAT3 Mutations in Large Granular Lymphocytic Leukemia

H.L.M. Koskela and Others

背景

T 細胞大顆粒リンパ球性白血病は,クローン性 CD3+CD8+細胞傷害性 T リンパ球(CTL)の増殖を特徴とするまれなリンパ球増殖性疾患であり,自己免疫疾患や免疫介在性血球減少症と関連することが多い.

方 法

次世代エクソーム塩基配列決定法を用いて,大顆粒リンパ球性白血病の指標患者の CTL における体細胞変異を同定した.クローン性の T 細胞受容体再構成と大顆粒リンパ球数の増加の特徴が明確な患者 76 例から成るコホートを対象に,標的再配列決定を行った.

結 果

大顆粒リンパ球性白血病患者 77 例中 31 例(40%)において,シグナル伝達性転写因子 3 遺伝子(STAT3)の変異が検出された.これら 31 例で高頻度に認められた変異のホットスポットとして,Y640F が 13 例(17%)に,D661V が 7 例(9%)に,D661Y が 7 例(9%)に,N647I が 3 例(4%)に認められた.変異はすべて,Src 相同 2(SH2)ドメインをコードするエクソン 21 に位置していた.SH2 ドメインは,STAT 蛋白の二量体化と活性化を仲介する.このアミノ酸の変化は,蛋白表面の疎水性を高め,STAT3 のリン酸化と核内局在化に関連した.in vitro の機能解析により,Y640F 変異と D661V 変異は STAT3 の転写活性を上昇させることが示された.罹患者では STAT3 経路の下流の標的遺伝子(IFNGR2BCL2L1JAK2)がアップレギュレートされていた.STAT3 変異を有する患者では,これらの変異がない患者と比較して,好中球減少症と関節リウマチが高頻度に認められた.

結 論

大顆粒リンパ球性白血病患者では,STAT3 の SH2 二量体化・活性化ドメインが高頻度に変異している.これらの結果から,この疾患の病因の基礎に,異常な STAT3 シグナル伝達があることが示唆される.(フィンランドアカデミーほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 1905 - 13. )