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May 24, 2012 Vol. 366 No. 21

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エストロゲンが緑膿菌のムコイド型と嚢胞性線維症の増悪に及ぼす影響
Effect of Estrogen on Pseudomonas Mucoidy and Exacerbations in Cystic Fibrosis

S.H. Chotirmall and Others

背景

嚢胞性線維症の女性では緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)がムコイド型に転換するリスクが高い.これは,重症度が性別によって異なることに寄与している.

方 法

エストラジオールとその代謝物であるエストリオールが P. aeruginosa に及ぼす影響を in vitroin vivo で評価し,エストラジオールが嚢胞性線維症の女性の増悪に及ぼす影響について検討した.

結 果

エストラジオールとエストリオールは,P. aeruginosa 株 01 と,嚢胞性線維症の患者とそうでない患者の臨床分離株において,アルギン酸産生を誘導した.エストラジオールに長期間曝露すると P. aeruginosa は初期のムコイド型を呈したのに対し,短期間の曝露では細菌カタラーゼの活性が阻害され,過酸化水素濃度が上昇した.これは DNA に損傷を与えている可能性がある.その結果,P. aeruginosa で,アルギン酸生合成の重要な制御因子である mucA のフレームシフト変異が同定された.in vivo でのエストラジオール濃度は,嚢胞性線維症の女性の感染増悪と関連しており(P<0.05),その大部分は卵胞期にみられた.アイルランド嚢胞性線維症登録を検討したところ,経口避妊薬の使用は抗菌薬の必要性の低下と関連していることが明らかになった.黄体期(エストラジオールが低値)の増悪時に採取した喀痰検体の大半で,非ムコイド型の P. aeruginosa が分離された.卵胞期(エストラジオールが高値)の増悪時には,ムコイド型菌が高い割合で分離され,in vivo では,月経周期のエストラジオール濃度の変動に一致して,さまざまな表現型の P. aeruginosa が認められた.

結 論

エストラジオールとエストリオールは,in vitro では嚢胞性線維症の女性における P. aeruginosa のムコイド型への転換を mucA の突然変異により誘導し,in vivo ではムコイド型の分離の選択性,増悪の増加,ムコイド型への転換と関連していた.(アイルランド分子医学の臨床医・科学者フェローシッププログラムから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 1978 - 86. )