日本人コホートにおける未破裂脳動脈瘤の自然歴
The Natural Course of Unruptured Cerebral Aneurysms in a Japanese Cohort
The UCAS Japan Investigators
未破裂脳動脈瘤の自然歴は明らかにされていない.
2001 年 1 月~2004 年 4 月に日本で新たに同定された未破裂脳動脈瘤患者を登録した.動脈瘤の破裂,患者死亡に関する情報,定期的な追跡検査結果を記録した.20 歳以上(平均年齢 62.5 歳,女性 68%)で,最大径が 3 mm 以上の嚢状動脈瘤を有し,当初はわずかな障害しか呈していなかった 5,720 例を対象とした.
検討した 6,697 個の動脈瘤のうち,91%は偶然に見つけられたものであった.動脈瘤は大部分が中大脳動脈(36%)と内頸動脈(34%)に位置しており,動脈瘤の平均径(±標準偏差)は 5.7±3.6 mm であった.動脈瘤 11,660 個・年の追跡調査期間中に破裂は 111 例で確認され,年間破裂率は 0.95%(95%信頼区間 [CI] 0.79~1.15)であった.動脈瘤の大きさに伴い破裂のリスクは上昇した.直径 3~4 mm の動脈瘤を基準とする直径別のハザード比は,5~6 mm で 1.13(95% CI 0.58~2.22),7~9 mm で 3.35(95% CI 1.87~6.00),10~24 mm で 9.09(95% CI 5.25~15.74),25 mm 以上で 76.26(95% CI 32.76~177.54)であった.中大脳動脈の動脈瘤と比較すると,後交通動脈と前交通動脈の動脈瘤は破裂する可能性が高かった(ハザード比,それぞれ 1.90 [95% CI 1.12~3.21] と 2.02 [95% CI 1.13~3.58]).ブレブ(動脈瘤壁の不規則な突出)を伴う動脈瘤もまた,破裂する可能性が高かった(ハザード比 1.63,95% CI 1.08~2.48).
この研究では,未破裂脳動脈瘤の自然歴は,動脈瘤の直径,部位,形状により異なることが示された.(厚生労働省ほかから研究助成を受けた.日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査 UMIN-CTR 番号:C000000418)