October 11, 2012 Vol. 367 No. 15
米国の病院における予防可能な感染症に対する支払い停止の影響
Effect of Nonpayment for Preventable Infections in U.S. Hospitals
G.M. Lee and Others
2008 年 10 月,メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)は,予防可能と考えられる特定の院内感染症に対して,以後の追加的な支払いを停止した.この施策が,医療関連感染症の発生率にどのような影響をもたらしたかは明らかにされていない.
中断時系列・比較シリーズによる準実験的デザインを用いて,CMS の施策の対象となった 2 つの医療関連感染症(中心静脈カテーテル関連血流感染,カテーテル関連尿路感染)の傾向における変化を,対象とならなかった転帰(人工呼吸器関連肺炎)と比較検討した.全米医療安全ネットワークに参加し,施策を講じる以前に医療関連感染症を 1 件以上報告した病院を適格とした.2006 年 1 月~2011 年 3 月のデータを対象とした.回帰モデルを用いて,この施策が感染発生率の変化に及ぼした影響を,ベースラインでの傾向を補正して評価した.
398 の病院または医療システムより,感染の種類ごとに 14,817~28,339 病棟単位・月が対象となった.この施策実施のかなり前から,施策の対象となった感染とならなかった感染の両方に長期的な低下傾向がみられた.施策実施後,中心静脈カテーテル関連血流感染(施策後期間 対 施策前期間の発生率比 1.00,P=0.97),カテーテル関連尿路感染(発生率比 1.03,P=0.08),人工呼吸器関連肺炎(発生率比 0.99,P=0.52)の四半期発生率に,有意な変化は認められなかった.これらの結果は報告義務のない州の病院においても同様であり,入院患者のメディケア加入者の比率または病院規模の四分位,所有者の種類,教育施設かどうかによる差も認められなかった.
中心静脈カテーテル関連血流感染とカテーテル関連尿路感染に対する支払いを減少させるための 2008 年の CMS 施策によって,米国の病院における感染率に測定しうる効果があったことを示すエビデンスは得られなかった.(医療研究品質局から研究助成を受けた.)