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August 16, 2012 Vol. 367 No. 7

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活動性潰瘍性大腸炎に対する経口ヤヌスキナーゼ阻害薬トファシチニブ
Tofacitinib, an Oral Janus Kinase Inhibitor, in Active Ulcerative Colitis

W.J. Sandborn and Others

背景

潰瘍性大腸炎は,結腸の慢性炎症性疾患であり,現行の治療は必ずしも全例に有効というわけではない.新しい治療法の一つとして可能性があるのは,ヤヌスキナーゼ 1,2,3 の経口阻害薬のトファシチニブ(tofacitinib)(CP-690,550)で,in vitro でキナーゼ 1,3 に対してキナーゼ 2 を上回る機能的特異性を有し,インターロイキン 2,4,7,9,15,21 などの γ 鎖を含むサイトカインが関わるシグナル伝達を阻害すると考えられている.これらのサイトカインは,リンパ球の活性化,機能,増殖に不可欠である.

方 法

二重盲検プラセボ対照第 2 相試験において,中等症~重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者 194 例を対象に,トファシチニブの有効性を評価した.患者をトファシチニブ 0.5 mg,3 mg,10 mg,15 mg,またはプラセボの 1 日 2 回 8 週間投与に無作為に割り付けた.主要転帰は 8 週の時点での臨床反応とし,潰瘍性大腸炎の活動性を評価する Mayo スコアシステム(0~12 で,スコアが高いほど疾患が重症であることを示す)でベースラインからの 3 以上の絶対的低下と 30%以上の相対的低下があり,これとともに直腸出血のサブスコアが 1 以上低下するか,直腸出血の絶対的サブスコアが 0 または 1 であることと定義した.

結 果

主要転帰である 8 週の時点での臨床反応が認められたのは,トファシチニブ 0.5 mg 群では 32%(P=0.39),3 mg 群では 48%(P=0.55),10 mg 群では 61%(P=0.10),15 mg 群では 78%(P<0.001)であったのに対し,プラセボ群では 42%であった.8 週の時点での臨床的寛解(Mayo スコアが 2 以下で,いずれのサブスコアも 1 未満であることと定義)が認められたのは,トファシチニブ 0.5 mg 群では 13%(P=0.76),3 mg 群では 33%(P=0.01),10 mg 群では 48%(P<0.001),15 mg 群では 41%(P<0.001)であったのに対し,プラセボ群では 10%であった.低比重リポ蛋白コレステロールと高比重リポ蛋白コレステロールの両方が用量依存的に増加した.トファシチニブを投与された患者 3 例で,1,500 未満の絶対好中球数が認められた.

結 論

トファシチニブを投与された中等症~重症の活動性潰瘍性大腸炎患者は,プラセボを投与された患者と比較して,臨床反応と臨床的寛解が認められる可能性が高かった.(Pfizer 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00787202)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 616 - 24. )