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August 30, 2012 Vol. 367 No. 9

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ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症における MYD88 L265P 体細胞変異
MYD88 L265P Somatic Mutation in Waldenström's Macroglobulinemia

S.P. Treon and Others

背景

ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症は,不治の IgM 産生リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)である.この疾患の基礎にある変異は明らかにされていない.

方 法

ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症患者 30 例で骨髄 LPL 細胞の全ゲノム配列決定を行い,10 例で正常組織と腫瘍組織のペア検体の配列決定を行った.その結果を,LPL 患者,LPL と同じ所見がいくつかみられる他の B 細胞性疾患患者,健常ドナーから成る拡大集団コホートの検体において,サンガー法による配列決定により検証した.

結 果

ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症患者のうち,ペア組織検体が得られた患者全 10 例の検体と,得られた検体がペアではない患者の 20 検体中 17 検体で,LPL 細胞の体細胞変異(T→C)が 3p22.2 の 38182641 で同定された.この変異体から,IRAK 介在性の NF-κB シグナル伝達を誘発する変異である,MYD88 のアミノ酸変化(L265P)が予測された.サンガー法による配列決定によって,ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症患者 54 例中 49 例と,非 IgM 産生 LPL 患者 3 例中 3 例(LPL 患者全体の 91%)の腫瘍検体で,MYD88 L265P が同定された.MYD88 L265P は,ペア検体が得られたワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症患者または非 IgM LPL 患者の正常組織検体と,健常ドナーの B 細胞では認められず,また,多発性骨髄腫,辺縁帯リンパ腫,意義不明の IgM 単クローン性免疫グロブリン血症の患者の検体では認められないか,まれにしか発現していなかった.MYD88 L265P を発現しているワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症細胞で MYD88 シグナル伝達を阻害すると,IκBα と NF-κB p65 のリン酸化が減少するとともに,NF-κB の核染色が減少した.終止またはフレームシフトをもたらす ARID1A の体細胞変異も,30 例中 5 例(17%)で同定され,疾患負荷の増大に関連していた.さらに,野生型 MYD88 を有するワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症患者 3 例中 2 例において,MLL2 の体細胞変異が認められた.

結 論

MYD88 L265P は,ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症患者に高頻度にみられる変異であり,ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症と非 IgM LPL を,同じ所見がいくつかみられる B 細胞性疾患と鑑別するのに有用である可能性がある.(ピーター・アンド・ヘレン・ビング財団ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 826 - 33. )