September 6, 2012 Vol. 367 No. 10
肺動脈拡張と慢性閉塞性肺疾患の急性増悪
Pulmonary Arterial Enlargement and Acute Exacerbations of COPD
J.M. Wells and Others
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪は,肺機能の急激な低下と死亡に関連する.これらのイベントのリスクがある患者,なかでも入院を要する患者を同定することが大いに重要である.重症肺高血圧症は,進行した COPD の重要な合併症であり急性増悪を予測するが,肺血管の異常も COPD の早期に発生する.われわれは,肺血管疾患(肺動脈拡張)の CT による計量評価(肺動脈径の大動脈径に対する比 [PA/A 比]>1 により判定)が,COPD の重度増悪に関連するという仮説を立てた.
COPD を有する現在喫煙者と過去喫煙者を対象とする多施設共同観察試験を行った.PA/A 比>1 と,登録時における入院を要する重度増悪の既往との関連を検討した.続いて,同コホートと外部検証コホートの経時的追跡調査によって,PA/A 比がこれらのイベントの予測因子として有用かどうかを検討した.ロジスティック回帰分析と,ゼロ過剰負の二項回帰分析を用い,増悪の既知の危険因子について補正した.
多変量ロジスティック回帰分析によって,PA/A 比>1 と試験登録時の重度増悪の既往とのあいだに,有意な関連が認められた(オッズ比 4.78,95%信頼区間 [CI] 3.43~6.65,P<0.001).また,PA/A 比>1 は,将来の重度増悪のリスク上昇に独立に関連することが,試験コホート(オッズ比 3.44,95% CI 2.78~4.25,P<0.001)と外部検証コホート(オッズ比 2.80,95% CI 2.11~3.71,P<0.001)の両方で示された.いずれのコホートでも,解析したすべての変数のなかで,PA/A 比>1 が重度増悪ともっとも強い関連を示した.
CT によって検出される肺動脈拡張(PA/A 比>1)は,COPD の重度増悪に関連していた.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00608764,NCT00292552)