集中治療室での感染予防における標的患者に対する除菌と患者全例に対する除菌との比較
Targeted versus Universal Decolonization to Prevent ICU Infection
S.S. Huang and Others
集中治療室(ICU)において,保菌・感染が確認された患者に標的を絞った除菌(標的除菌)と患者全例に対する除菌(全例除菌)は,医療関連感染症,とくにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染の予防戦略の候補である.
実用的クラスター無作為化試験において,参加病院を 3 つの戦略のいずれかに無作為に割り付けた.1 病院内のすべての成人 ICU を同一の戦略に割り付けた.第 1 群では MRSA スクリーニング+隔離を行い,第 2 群では標的除菌(スクリーニング,隔離,MRSA 保菌者の除菌)を行い,第 3 群では全例除菌(スクリーニングを行わず,全例に除菌)を行った.病院をクラスタリングし,比例ハザードモデルを用いて試験群間における感染の減少の差を評価した.
43 の病院(ICU 74 室,介入期間中の患者数 74,256 例)を無作為化した.介入期間とベースライン期間との比較で,MRSA 臨床分離株のモデル化ハザード比は,スクリーニング+隔離では 0.92(1,000 日あたりの未補正分離株 3.2 対 3.4),標的除菌では 0.75(1,000 日あたりの未補正分離株 3.2 対 4.3),全例除菌では 0.63(1,000 日あたりの未補正分離株 2.1 対 3.4)であった(全群の分析ですべて P=0.01).介入期間とベースライン期間との比較で,何らかの病原体による血流感染のハザード比は,スクリーニング+隔離では 0.99(1,000 日あたりの未補正感染 4.1 対 4.2),標的除菌では 0.78(1,000 日あたりの未補正感染 3.7 対 4.8),全例除菌では 0.56(1,000 日あたりの未補正感染 3.6 対 6.1)であった(全群の分析ですべて P<0.001).全例除菌により,すべての血流感染の発生率が,標的除菌,スクリーニング+隔離のいずれよりも有意に大きく低下した.血流感染は除菌を受けた 99 例あたり 1 件予防された.MRSA 血流感染率の低下は,すべての血流感染率の低下と類似していたが,群間での有意差はなかった.有害事象は 7 例で発生したが,軽度でありクロルヘキシジンに関連するものであった.
ICU の通常業務において,全例除菌は,標的除菌またはスクリーニング+隔離と比較して,MRSA 臨床分離株,およびあらゆる病原体による血流感染率を低下させるうえで有効であった.(米国医療研究品質局, 米国疾病対策予防センターから研究助成を受けた.REDUCE MRSA ClinicalTrials.gov 番号:NCT00980980)