December 19, 2013 Vol. 369 No. 25
JAK2 変異を伴わない骨髄増殖性腫瘍における CALR の体細胞変異
Somatic CALR Mutations in Myeloproliferative Neoplasms with Nonmutated JAK2
J. Nangalia and Others
骨髄増殖性腫瘍の多くでは,ヤヌスキナーゼ 2 遺伝子(JAK2)に体細胞変異が生じている.しかし,JAK2 の変異を伴わない骨髄増殖性腫瘍の分子病態は明らかではなく,その診断には課題が残っている.
骨髄増殖性腫瘍患者 151 例から採取した検体についてエクソーム配列決定を行った.さらに造血器腫瘍 1,345 検体,その他の腫瘍 1,517 検体,対照 550 検体において,カルレティキュリン(calreticulin)をコードする遺伝子(CALR)の変異状態を解析した.造血コロニーを用いて系統樹を作成した.また,免疫蛍光法とフローサイトメトリーを用いてカルレティキュリンの細胞内局在を調査した.
エクソーム配列決定によって,151 例で 1,498 の変異が同定された.患者あたりの変異数の中央値は,真性多血症検体で 6.5,本態性血小板血症検体で 6.5,骨髄線維症検体で 13.0 であった.CALR の体細胞変異は,JAK2 変異を伴わない骨髄増殖性腫瘍検体の 70~84%,骨髄異形成検体の 8%,他の骨髄系腫瘍検体のごく一部で認められ,その他の腫瘍では認められなかった.148 の CALR 変異は,19 の異なる多様体に分類された.変異はエクソン 9 に位置し,1 塩基対挿入によるフレームシフトを起こしていた.これによって新規の C 末端を有する変異蛋白が生じると考えられた.変異カルレティキュリンは小胞体で観察され,細胞表面やゴルジ体における蓄積の増加は認められなかった.CALR 変異を有する骨髄増殖性腫瘍患者は,JAK2 変異を有する患者と比較して血小板数が多く,ヘモグロビン値が低かった.CALR の変異は造血幹細胞や造血前駆細胞で検出された.クローン解析によって CALR の変異が系統樹のもっとも早期の分岐点で起きていることが明らかになった.この所見は,一部の患者では CALR 変異が初発変異としての役割を担っていることと一致した.
JAK2 の変異を伴わない骨髄増殖性腫瘍患者の大部分で,小胞体シャペロン CALR の体細胞変異が認められた.(ケイ・ケンドール白血病財団ほかから研究助成を受けた.)