November 6, 2014 Vol. 371 No. 19
全米肺スクリーニング試験における CT を用いたスクリーニングの費用対効果
Cost-Effectiveness of CT Screening in the National Lung Screening Trial
W.C. Black and Others
全米肺スクリーニング試験(NLST)では,低線量 CT を用いたスクリーニングにより,胸部 X 線を用いたスクリーニングと比較して,肺癌死亡率が低下することが示された.われわれは,NLST における低線量 CT を用いたスクリーニングの費用対効果を検討した.
低線量 CT によるスクリーニング,X 線検査によるスクリーニング,スクリーニングなしの選択可能な 3 つの戦略について,生存年,質調整生存年(QALY),1 人あたりの費用,増分費用対効果比(ICER)の平均を推定した.生存年は,試験期間中の観察死亡数と,試験終了時に生存していた人の予測生存期間に基づいて推定した.生存年の質調整には,QOL 調査のために選定したサブグループから算出した効用値を用いた.費用は,利用率とメディケアの償還に基づいて推定した.年齢,性別,喫煙歴,肺癌リスクで定義されたサブグループの解析と,いくつかの仮定に基づく感度分析も行った.
スクリーニングなしと比較して,低線量 CT によるスクリーニングでは,費用は 1 人あたり 1,631 ドル(95%信頼区間 [CI] 1,557~1,709)増加し,生存年は 1 人あたり 0.0316 年(95% CI 0.0154~0.0478)延長し,QALY は 1 人あたり 0.0201 年(95% CI 0.0088~0.0314)延長した.対応する ICER は,獲得生存年あたり 52,000 ドル(95% CI 34,000~106,000),1 QALY 獲得あたり 81,000 ドル(95% CI 52,000~186,000)であった.しかし,ICER には,サブグループ解析と感度分析において大きなばらつきがみられた.
低線量 CT による肺癌スクリーニングでは,1 QALY 獲得あたり 81,000 ドルの費用がかかると推定されたが,仮定のわずかな変更によってこの数値が大幅に変わる可能性があることを見出した.試験以外でのスクリーニングに費用対効果があるかどうかの判定は,スクリーニングがどのように実施されるかに依存することになる.(米国国立がん研究所から研究助成を受けた.NLST 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00047385)