March 12, 2015 Vol. 372 No. 11
脳梗塞に対する早期血管内治療の無作為化試験
Randomized Assessment of Rapid Endovascular Treatment of Ischemic Stroke
M. Goyal and Others
前方循環の脳血管近位部に閉塞をきたした患者では,60~80%が,アルテプラーゼ治療を行っても,脳卒中発症後 90 日以内に死亡するか,機能的自立度が回復しない.急性期脳梗塞患者で,虚血中心部が小さく,頭蓋内動脈近位部に閉塞を認め,側副血行が中等度~良好である例を対象として,標準治療に早期血管内治療を併用する治療法を検討した.
患者を,標準治療を行う群(対照群)と,標準治療に加えて利用可能な血栓除去デバイスを用いて血管内治療を行う群(介入群)に無作為に割り付けた.前方循環の頭蓋内動脈近位部に閉塞が認められる,発症後 12 時間までの患者を対象とした.CT および CT 血管造影を行い,虚血中心部が大きかった患者,側副血行が不良であった患者は除外した.処置所要時間を測定し,事前に設定した目標値と比較した.主要評価項目は,90 日の時点での修正 Rankin スケール(0 [症状なし]~6 [死亡])のスコアとした.比例オッズモデルを用いて,介入により,修正 Rankin スケールスコアが対照治療よりも低下する確率を表す指標として共通オッズ比を算出した(シフト解析).
有効性が認められたため,試験は早期に中止された.世界 22 施設で 316 例が登録され,うち 238 例がアルテプラーゼ静注療法を受けた(介入群 120 例,対照群 118 例).介入群において,頭部 CT から初回再灌流までの時間の中央値は 84 分であった.機能的自立度が回復(90 日の時点での修正 Rankin スコア 0~2)した患者の割合は,介入によって上昇した(53.0% 対 対照群 29.3%,P<0.001).主要評価項目は介入群のほうが良好であり(共通オッズ比 2.6,95%信頼区間 1.7~3.8,P<0.001),介入に,死亡率低下との関連が認められた(10.4% 対 対照群 19.0%,P=0.04).症候性脳内出血の発生率は介入群 3.6%,対照群 2.7%であった(P=0.75).
急性期脳梗塞患者で,脳血管近位部に閉塞が認められ,虚血中心部が小さく,側副血行が中等度~良好である例では,早期血管内治療により機能的転帰が改善し, 死亡率が低下した.(Covidien 社ほかから研究助成を受けた.ESCAPE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01778335)