アレルゲン吸入誘発喘息反応の GATA3 特異的 DNA ザイムによる修飾
Allergen-Induced Asthmatic Responses Modified by a GATA3-Specific DNAzyme
N. Krug and Others
喘息のもっとも一般的な表現型は,2 型ヘルパー T 細胞(Th2)によって引き起こされる好酸球性炎症を特徴とする.Th2 経路の重要な転写因子である GATA3 を治療標的にすることで,利益が得られる可能性がある.われわれは,GATA3 のメッセンジャー RNA(mRNA)を切断し,不活性化させることのできる新規 DNA 酵素(DNA ザイム)SB010 の安全性と有効性を評価した.
喀痰中好酸球増多を伴うアレルギー性喘息を有し,さらに,検査室でのアレルゲン吸入誘発後に即時型・遅発型の二相性喘息反応を示した患者を対象に,SB010 の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を行った.計 40 例を評価しえた.21 例が SB010 10 mg 投与,19 例がプラセボ投与に割り付けられ,それぞれ 1 日 1 回,28 日間吸入した.投与期間の前後にアレルゲン吸入誘発試験を行った.主要評価項目は,1 秒量(FEV1)の曲線下面積(AUC)の変化により定量化した,遅発型喘息反応とした.
28 日後,FEV1 の AUC に基づく遅発型喘息反応の平均は,SB010 では,ベースラインと比較して 34%減弱したのに対し,プラセボでは 1%増強した(P=0.02).FEV1 の AUC に基づく即時型喘息反応は,SB010 では 11%減弱したのに対し,プラセボでは 10%増強した(P=0.03).SB010 による遅発型喘息反応の抑制は,アレルゲン吸入誘発喀痰中好酸球増多の減弱と,喀痰中トリプターゼ値,血漿中インターロイキン-5 値がより低いことに関連した.アレルゲン吸入誘発後の呼気一酸化窒素濃度と,メサコリンに対する気道過敏性の程度は,SB010 とプラセボのいずれの影響も受けなかった.
アレルギー性喘息患者において,SB010 投与により,アレルゲン吸入誘発後の遅発型喘息反応と即時型喘息反応の両方が有意に減弱した.バイオマーカー解析では,Th2 によって調節される炎症反応が減弱することが示された.(Sterna Biologicals 社,ドイツ連邦教育研究省から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01743768)