成人重症患者に対する許容範囲内での低栄養と標準的経腸栄養との比較
Permissive Underfeeding or Standard Enteral Feeding in Critically Ill Adults
Y.M. Arabi and Others
成人重症患者にとっての適切なエネルギー量は明らかではない.成人重症患者において,非蛋白カロリーの制限(許容低栄養)と標準的経腸栄養とで,90 日死亡率に及ぼす影響を比較評価した.両群とも推奨される蛋白量は維持した.
7 施設で,内科,外科,外傷のいずれかの分類で入院した成人重症患者 894 例を,許容低栄養群(エネルギー必要量の 40~60%)と標準的経腸栄養群(同 70~100%)に無作為に割り付け,最長 14 日間,同程度の蛋白摂取を維持しながら投与を行った.主要評価項目は 90 日死亡率とした.
患者背景は両群で同様であり,患者の 96.8%が人工換気を受けていた.介入期間中に投与されたエネルギー量の平均(±SD)は,許容低栄養群のほうが標準的経腸栄養群よりも少なかった(835±297 kcal/日 対 1,299±467 kcal/日,P<0.001;必要量の 46±14% 対 71±22%,P<0.001).蛋白摂取量は両群で同程度であった(それぞれ 57±24 g/日と 59±25 g/日,P=0.29).90 日死亡率は,許容低栄養群 445 例中 121 例(27.2%),標準的経腸栄養群 440 例中 127 例(28.9%)で,同程度であった(許容低栄養群の相対リスク 0.94,95%信頼区間 [CI] 0.76~1.16,P=0.58).重篤な有害事象は報告されず,栄養不耐性,下痢,集中治療室(ICU)内感染,ICU 在室日数・入院日数に関して,群間で有意差は認められなかった.
成人重症患者に対し,非蛋白カロリーを制限した経腸栄養投与は,計画通りの全量の非蛋白カロリーの経腸栄養投与よりも死亡率が低くなることはなかった.(アブドラ王立国際医療研究センターから研究助成を受けた.PermiT 試験:Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN68144998)