February 19, 2015 Vol. 372 No. 8
急性呼吸促迫症候群における駆動圧と生存
Driving Pressure and Survival in the Acute Respiratory Distress Syndrome
M.B.P. Amato and Others
急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者に対して,低吸気終末(プラトー)圧,低 1 回換気量(VT),高呼気終末陽圧(PEEP)を用いる人工換気戦略は,生存を改善する可能性があるが,これらの各要素の相対的な重要性は明らかにされていない.呼吸器系コンプライアンス(CRS)は,疾患発症時に含気し,機能が残存している肺の容量(以下,機能的肺容量)と強く関連しているため,われわれは,能動的に呼吸していない患者では,駆動圧(ΔP=VT/CRS)のほうが,機能的肺容量(健常者で予測される肺の大きさではなく)に合わせて VT が内的に標準化されるため,VT や PEEP よりも生存と強く関連する指標になるという仮説を立てた.
マルチレベル媒介分析として知られている統計手法を用いて,これまでに報告された無作為化試験 9 件に登録された ARDS 患者 3,562 例の個々のデータを分析し,ΔP を生存と関連する独立変数として検討した.媒介分析では,ベースラインにおける肺疾患の重症度による交絡を最小限に抑えながら,無作為化された人工呼吸器の設定によるΔP の変化の単独の効果を推定した.
換気変数のうち,ΔP に生存とのもっとも強い関連が認められた.ΔP の 1SD 増加(約 7 cmH2O)は,死亡率上昇と関連しており(相対リスク 1.41,95%信頼区間 [CI] 1.31~1.51,P<0.001),「保護的」なプラトー圧および VT を用いた患者でも同様であった(相対リスク 1.36,95% CI 1.17~1.58,P<0.001).無作為化後の VT または PEEP の個々の変化に,生存との独立した関連は認められず,それらの変化が ΔP の低下をもたらした変化であった場合にのみ関連が認められた(ΔP の媒介効果,それぞれ P=0.004 と P=0.001).
ΔP は,リスクをもっともよく層別化する換気変数であることが明らかになった.人工呼吸器設定の変更によってもたらされる ΔP の低下は,生存の改善と強く関連していた.(サンパウロ州研究財団ほかから研究助成を受けた.)