大気の質の改善と小児の肺発達との関連
Association of Improved Air Quality with Lung Development in Children
W.J. Gauderman and Others
南カリフォルニアの大気汚染に対し,大気の質管理政策を実施した結果,この数十年で汚染レベルは徐々に低下する傾向がみられている.われわれは,長期的な汚染の減少が,小児における呼吸器の健康の改善と関連しているかどうかを評価した.
小児健康調査の一環として,1994~98 年,1997~2001 年,2007~11 年の 3 期間に調査が行われた 3 コホートの小児計 2,120 人において,肺機能測定を年に 1 回行った.各コホートの児の平均年齢は,各期間の開始時点で 11 歳,終了時点で 15 歳であった.線形回帰モデルを用いて,経時的な汚染レベルの低下と,11 歳から 15 歳にかけての肺機能発達との関連を検討した.肺機能発達は,その期間における 1 秒量(FEV1)および努力肺活量(FVC)の増加(4 年間の FEV1・FVC 増加と呼ぶ)として評価した.
3 コホートで調査が行われた 13 年の期間で,4 年間のFEV1・FVC 増加は,二酸化窒素濃度の低下(FEV1 と FVC の両方について P<0.001),空気力学径 2.5μm 未満の粒子状物質濃度の低下(FEV1 について P=0.008,FVC について P<0.001),同 10μm 未満の粒子状物質濃度の低下(FEV1 と FVC の両方について P<0.001)に関連していた.これらの関連は,可能性のある複数の交絡因子について補正しても認められた.肺機能発達の有意な改善は,男児と女児の両方で,また喘息児と非喘息児の両方で認められた.15 歳の時点で FEV1 が臨床的に低い(予測値の<80%と定義)児の割合は,大気の質の改善に伴い,3 期間にわたって 7.9%から 6.3%,3.6%へと有意に低下した(P=0.001).
大気の質の長期的な改善は,小児の肺機能発達に対して,統計的・臨床的に有意なよい影響を及ぼしていることが認められた.(健康影響研究所ほかから研究助成を受けた.)