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March 12, 2015 Vol. 372 No. 11

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心臓手術後の輸血の非制限的実施と制限的実施との比較
Liberal or Restrictive Transfusion after Cardiac Surgery

G.J. Murphy and Others

背景

心臓手術後にヘモグロビン閾値を制限して赤血球輸血を行う場合,制限せずに行う場合と比較して,術後の合併症発生率と医療費が低下するかどうかは明らかではない.

方 法

英国の 17 施設において,予定心臓手術を受ける 16 歳超の患者を対象に,多施設共同並行群間試験を行った.術後ヘモグロビン値が 9 g/dL 未満の患者を,ヘモグロビン閾値制限的輸血群(ヘモグロビン値 7.5 g/dL 未満)と,非制限的輸血群(ヘモグロビン値 9 g/dL 未満)に無作為に割り付けた.主要転帰は,無作為化後 3 ヵ月以内の重篤な感染症(敗血症または創感染),または虚血性イベント(永続的脳梗塞 [脳画像での確認と,運動・感覚・協調運動のいずれかの障害],心筋梗塞,腸梗塞,急性腎障害)とした.手術日から術後 3 ヵ月までにかかった医療費を,指標手術の費用を除いて推計した.

結 果

無作為化された 2,007 例のうち,4 例が参加を中止したため,1,000 例を閾値制限的輸血群,1,003 例を閾値非制限的輸血群に割り付けた.無作為化後の輸血率は,それぞれ 53.4%と 92.2%であった.主要転帰の発生率は,閾値制限的輸血群では 35.1%,閾値非制限的輸血群では 33.0%であり(オッズ比 1.11,95%信頼区間 [CI] 0.91~1.34,P=0.30),サブグループでの不均一性は示されなかった.死亡は,閾値制限的輸血群のほうが閾値非制限的輸血群よりも多かった(4.2% 対 2.6%,ハザード比 1.64,95% CI 1.00~2.67,P=0.045).主要転帰のイベントを除く重篤な術後合併症の発生率は,閾値制限的輸血群では 35.7%,閾値非制限的輸血群では 34.2%であった.医療費に群間で有意差は認められなかった.

結 論

心臓手術後にヘモグロビン閾値を制限して行う輸血は,合併症発生率と医療費に関して,閾値を制限せずに行う輸血と比較して優越性を示さなかった.(英国国立健康研究所医療技術評価プログラムから研究助成を受けた.Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN70923932)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 372 : 997 - 1008. )