September 17, 2015 Vol. 373 No. 12
抗血清アミロイド P 成分抗体を用いたアミロイドの治療的クリアランス
Therapeutic Clearance of Amyloid by Antibodies to Serum Amyloid P Component
D.B. Richards and Others
全身性アミロイドーシスを引き起こす線維アミロイド沈着物には,非線維性の正常な血漿蛋白質である血清アミロイド P 成分(SAP)が常に含まれる.(R)-1-[6-[(R)-2-carboxy-pyrrolidin-1-yl]-6-oxo-hexanoyl]pyrrolidine-2-carboxylic acid(CPHPC)という薬剤によって,血漿中の SAP は効率的に除去されるが,一部はアミロイド沈着物中に残存し,IgG 抗 SAP 抗体による治療の特異的標的となりうる.マウスアミロイド A アミロイドーシスでは,IgG 抗 SAP 抗体がアミロイド沈着物中に残存する SAP に結合すると,補体が活性化され,マクロファージ由来の多核巨細胞によるアミロイドの迅速なクリアランスが引き起こされる.
全身性アミロイドーシスの患者 15 例を対象に,第 1 相非盲検単回用量漸増試験を行った.まず CPHPC を用いて循環血中の SAP を除去したあと,完全ヒト化モノクローナル IgG1 抗 SAP 抗体を静脈内投与した.心臓障害の臨床所見を呈する患者は安全性の理由により除外した.臓器機能,炎症マーカー,アミロイド蓄積量の観察を行った.
重篤な有害事象は認められなかった.投与時反応は,試験の初期により高用量の抗体を投与された患者の一部にみられたが,その後の患者では投与速度を遅くしたことにより,反応は減弱された.6 週の時点で,アミロイド蓄積量に見合った十分量の抗体を投与されていた患者では,エラストグラフィ測定した肝硬度が低下していた.これらの患者では,SAP シンチグラフィと MRI により計測した細胞外容積で示された,肝臓のアミロイド蓄積量の大幅な減少と関連して,肝機能の改善が認められた.また,腎臓のアミロイド蓄積量の減少と,アミロイドの蓄積したリンパ節の縮小も認められた.
CPHPC,抗 SAP 抗体の逐次投与は,肝臓およびその他一部の組織におけるアミロイド沈着物のクリアランスを安全に引き起こした.(GlaxoSmithKline 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01777243)