December 10, 2015 Vol. 373 No. 24
疥癬が流行している集団における疥癬対策を目的とした集団治療薬投与
Mass Drug Administration for Scabies Control in a Population with Endemic Disease
L. Romani and Others
多くの発展途上国では,疥癬は疾患の原因になることがほとんど認識されていない.疥癬に関連する膿痂疹は,重篤な全身合併症にいたる場合がある.われわれはフィジーで,疥癬対策を目的とした集団治療薬投与に関する試験を行った.
3 つの島嶼地域を,疥癬対策を目的とした 3 種類の介入(感染者およびその接触者に対しペルメトリン [permethrin] の投与を行う標準治療 [標準治療群],ペルメトリンの集団投与 [ペルメトリン群],イベルメクチンの集団投与 [イベルメクチン群])に無作為に割り付けた.主要評価項目は,疥癬と膿痂疹の有病率の,ベースラインから 12 ヵ月の時点までの変化とした.
2,051 例が登録された.内訳は,標準治療群 803 例,ペルメトリン群 532 例,イベルメクチン群 716 例であった.ベースラインから 12 ヵ月の時点までに,疥癬の有病率は全群で有意に低下し,イベルメクチン群でもっとも大きく低下した.標準治療群では 36.6%から 18.8%に低下し(相対的低下 49%,95%信頼区間 [CI] 37~60),ペルメトリン群では 41.7%から 15.8%に低下し(相対的低下 62%,95% CI 49~75),イベルメクチン群では 32.1%から 1.9%に低下した(相対的低下 94%,95% CI 83~100).膿痂疹の有病率も全群で低下し,イベルメクチン群でもっとも大きく低下した.標準治療群では 21.4%から 14.6%に低下し(相対的低下 32%,95% CI 14~50),ペルメトリン群では 24.6%から 11.4%に低下し(相対的低下 54%,95% CI 35~73),イベルメクチン群では 24.6%から 8.0%に低下した(相対的低下 67%,95% CI 52~83).有害事象は軽度であり,イベルメクチン群でペルメトリン群よりも多く報告された(15.6% 対 6.8%).
集団治療薬投与,とくにイベルメクチンの投与は,疥癬および膿痂疹対策に有効であった.(オーストラリア国立保健医療研究審議会から研究助成を受けた.Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12613000474752)