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March 31, 2016 Vol. 374 No. 13

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エストラジオールの閉経後早期投与と閉経後後期投与による血管への影響の比較
Vascular Effects of Early versus Late Postmenopausal Treatment with Estradiol

H.N. Hodis and Others

背景

エストロゲンを含むホルモン療法の心血管疾患に対する有益な効果は,閉経に近い時期に開始した場合には認められるが,開始が遅かった場合には認められないことを示唆するデータがある.しかし,閉経後のホルモン療法の心血管系に対する効果は,開始のタイミングによって異なるという仮説(ホルモン療法のタイミング仮説)は検証されていない.

方 法

健常な閉経後女性 643 例を,閉経からの経過時間(6 年未満 [閉経後早期] または 10 年以上 [閉経後後期])で層別化し,17β-エストラジオール(1 mg/日)経口投与群(子宮を有する女性にはプロゲステロン [45 mg] 経腟ゲルも連日投与 [1 日 1 回,30 日サイクルのうち 10 日間投与])と,プラセボ経口投与群(子宮を有する女性にはプラセボ経腟ゲルも連日投与)に無作為に割り付けた.主要評価項目は頸動脈内膜中膜厚(CIMT)の変化の割合とし,6 ヵ月ごとに測定した.副次的評価項目は心臓 CT による冠動脈アテローム性硬化の評価などとし,CT 評価は参加者が割り付けられたレジメンを完了した時点で行った.

結 果

中央値 5 年後,プロゲステロンの投与・非投与にかかわらず,CIMT 進行に対するエストラジオールの効果は,閉経後早期層と閉経後後期層とで異なっていた(交互作用の P=0.007).無作為化の時点で閉経後 6 年未満であった女性では,CIMT の平均はプラセボ群では 1 年あたり 0.0078 mm 増加したのに対し,エストラジオール群では 0.0044 mm 増加した(P=0.008).閉経後 10 年以上経過していた女性では,CIMT 進行の割合はプラセボ群とエストラジオール群とで同程度であった(それぞれ 1 年あたり 0.0088 mm と 0.0100 mm,P=0.29).いずれの層でも,CT で評価した冠動脈石灰化,全体の狭窄,プラークに,プラセボ群とエストラジオール群とで有意差は認められなかった.

結 論

経口エストラジオール療法は,閉経後 6 年以内に開始した場合,プラセボと比較して無症候性アテローム性動脈硬化症の進行(CIMT で評価)が抑制されることに関連していたが,閉経後 10 年以上経過してから開始した場合は,関連は認められなかった.エストラジオールには,いずれの層においても,心臓 CT で評価したアテローム性動脈硬化に有意な効果は認められなかった.(米国国立老化研究所, 米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ELITE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00114517)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 1221 - 31. )