April 21, 2016 Vol. 374 No. 16
一過性脳虚血発作または軽症脳卒中から 1 年後の脳卒中リスク
One-Year Risk of Stroke after Transient Ischemic Attack or Minor Stroke
P. Amarenco and Others
1997~2003 年に行われた先行研究では,一過性脳虚血発作(TIA)または軽症脳卒中の発症後 3 ヵ月間の脳卒中または急性冠症候群のリスクは 12~20%と推定されている.現在では緊急評価を脳卒中専門医が行うようになり,TIAregistry.org プロジェクトは,そのような医療体制で治療を受ける TIA または軽症脳卒中患者の現代の特性,背景因子,転帰を報告するためにデザインされた.
過去 7 日以内に TIA または軽症脳卒中を発症した患者を登録した.TIA 患者の緊急評価を行う体制が整っている施設が選択された.1 年後の脳卒中リスクと,1 年後の脳卒中・急性冠症候群・心血管系の原因による死亡の複合転帰リスクを推定した.また,脳卒中リスクを評価する ABCD2 スコア(0 [リスクがもっとも低い]~7 [リスクがもっとも高い]),脳画像所見,TIA または軽症脳卒中の原因と,1 年間の脳卒中再発リスクとの関連を検討した.
2009~11 年に,21 ヵ国 61 施設で 4,789 例が登録された.発症後 24 時間以内に,患者の 78.4%が脳卒中専門医の評価を受けた.患者の 33.4%に急性期脳梗塞,23.2%に頭蓋外・頭蓋内血管の 50%以上の狭窄が 1 ヵ所以上,10.4%に心房細動が認められた.Kaplan–Meier 推定による 1 年後の複合心血管系転帰イベントの発生率は 6.2%(95%信頼区間 5.5~7.0)であった.2,7,30,90,365 日の時点の Kaplan–Meier 推定による脳卒中発症率は,それぞれ 1.5%,2.1%,2.8%,3.7%,5.1%であった.多変量解析では,脳画像検査で梗塞を複数認めること,大動脈のアテローム硬化,ABCD2 スコアが 6 または 7 であることは,それぞれ,脳卒中リスクが 2 倍を上回ることに関連していた.
TIA 発症後の心血管系イベントのリスクは,先行研究での報告よりも低いことが認められた.ABCD2 スコア,脳画像所見,大動脈のアテローム硬化状態は,TIA または軽症脳卒中の発症後 1 年以内の脳卒中再発リスクを層別化するのに有用であった.(Sanofi 社,Bristol-Myers Squibb 社から研究助成を受けた.)