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July 7, 2016 Vol. 375 No. 1

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乳癌に対するベリパリブとカルボプラチン併用療法の適応的無作為化
Adaptive Randomization of Veliparib–Carboplatin Treatment in Breast Cancer

H.S. Rugo and Others

背景

乳癌は,その遺伝的・臨床的不均一性から,有効な治療をみつけるのが困難になっている.われわれは,乳癌に対する複数の実験的レジメンと標準術前補助化学療法の併用を検討するために,多施設共同適応的無作為化第 2 相試験である I-SPY 2 試験をデザインした.目標は,実験的レジメンと,そのレジメンが奏効する乳癌のサブタイプとをマッチさせることである.本稿では,カルボプラチンにポリ(ADP リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬ベリパリブ(veliparib)を併用した結果を報告する.

方 法

この試験は,腫瘍径が 2.5 cm 以上のステージ II または III の乳癌女性を適格とし,現在進行中である.乳癌は,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)の状態,ホルモン受容体の状態,70 遺伝子アッセイの結果に基づき 8 つのバイオマーカーサブタイプに分類し,標準療法よりも良好な成績のレジメンについては患者がそのレジメンを受けられるよう,各バイオマーカーサブタイプ内で適応的無作為化を行うこととした.レジメンは,10 のバイオマーカー特性(あらかじめ定義したバイオマーカーサブタイプの組合せ)内で評価することとした.標準療法へのベリパリブ+カルボプラチンの併用は,HER2 陰性腫瘍に対して検討したため,3 つの特性について評価した.主要評価項目は病理学的完全奏効とした.治療中に MRI で測定された腫瘍体積の変化から,患者が病理学的完全奏効を示すかどうかを予測する.いずれかのバイオマーカー特性内で良好な結果が得られたレジメンは,その特性内での第 3 相試験における成功を予測するベイズ確率が高い場合に,次の相に進めるものとした.

結 果

トリプルネガティブ乳癌に関して,ベリパリブ+カルボプラチンは,第 3 相試験での成功予測確率が 88%であった.72 例がベリパリブ+カルボプラチン群に無作為に割り付けられ,同時に 44 例が対照群に割り付けられた.トリプルネガティブ乳癌の患者集団における化学療法終了時の推定病理学的完全奏効率は,ベリパリブ+カルボプラチン群が51%(95%ベイズ確率区間 [PI] 36~66%)であったのに対し,対照群は 26%(95% PI 9~43%)であった.ベリパリブ+カルボプラチンの毒性は対照よりも高かった.

結 論

この試験で採用したプロセスにより,標準療法にベリパリブ+カルボプラチンを追加することで,標準療法単独と比較して,病理学的完全奏効率が,とくにトリプルネガティブ乳癌の患者で高くなることが示された.(QuantumLeap Healthcare Collaborative ほかから研究助成を受けた.I-SPY 2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01042379)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 23 - 34. )