術前化学療法後の乳癌に対する術後アジュバント療法としてのカペシタビン
Adjuvant Capecitabine for Breast Cancer after Preoperative Chemotherapy
N. Masuda and Others
ヒト上皮増殖因子受容体 2 型(HER2)陰性乳癌に対する術前ネオアジュバント化学療法後に浸潤癌が残存する患者の予後は不良である.このような患者における術後アジュバント化学療法の有用性は明らかにされていない.
術前ネオアジュバント化学療法(アントラサイクリン系薬,タキサン系薬,またはその両方を含む)後に HER2 陰性浸潤性乳癌が残存する患者 910 例を,標準的な術後治療にカペシタビンを追加する群と追加しない群(対照群)とに無作為に割り付けた.主要エンドポイントは無病生存期間とした.副次的エンドポイントは全生存期間などとした.
事前に規定した中間解析の結果が主要エンドポイントに達したため,この試験は早期に中止された.最終解析では,無病生存期間はカペシタビン群が対照群よりも長いことが示された(5 年の時点で生存しており,再発または二次癌を認めなかった患者の割合 74.1% 対 67.6%;再発,二次癌,死亡いずれかのハザード比 0.70;95%信頼区間 [CI] 0.53~0.92;P=0.01).全生存期間はカペシタビン群が対照群よりも長かった(5 年の時点で生存していた患者の割合 89.2% 対 83.6%;死亡のハザード比 0.59;95% CI 0.39~0.90;P=0.01).トリプルネガティブ乳癌患者では,無病生存率はカペシタビン群で 69.8%であったのに対し,対照群では 56.1%であり(再発,二次癌,死亡いずれかのハザード比 0.58;95% CI 0.39~0.87),全生存率は 78.8%に対し 70.3%であった(死亡のハザード比 0.52;95% CI 0.30~0.90).カペシタビンのもっとも頻度の高い有害反応である手足症候群は,カペシタビン群の 73.4%で発現した.
HER2 陰性乳癌に対するアントラサイクリン系薬,タキサン系薬,またはその両方を含む標準的術前ネオアジュバント化学療法後に病理検査で浸潤癌の残存が認められた患者において,カペシタビンによる術後アジュバント療法の追加は,無病生存期間と全生存期間を延長させるのに安全かつ有効であった.(先端医療研究支援機構,JBCRG [Japan Breast Cancer Research Group] から研究助成を受けた.CREATE-X 試験:UMIN 臨床試験登録番号 UMIN000000843)