敗血症性ショックに対する早期目標指向型治療 ― 患者レベルのメタ解析
Early, Goal-Directed Therapy for Septic Shock — A Patient-Level Meta-Analysis
The PRISM Investigators
1 件の単一施設試験と複数の観察研究で,早期目標指向型治療(EGDT)により敗血症性ショックの死亡率が低下することが示唆されたが,その後行われた 3 件の多施設共同試験(ProCESS 試験,ARISE 試験,ProMISe 試験)では有用性は示されなかった.これらの 3 試験の個別患者データを用いた今回のメタ解析は,統計学的検出力を高め,EGDT の治療効果の不均一性を検討するために前向きにデザインされた.
試験間の組入れ基準,介入プロトコール,転帰,資源利用の指標,データ収集を調整し,盲検化する前にすべての解析を特定した.3 試験の完了後,ProCESS 試験でプロトコールに基づく標準治療を受けた群以外のデータをプールし,それ以外の患者で差を解析した.主要評価項目は 90 日死亡率とした.副次的評価項目は,1 年生存率,臓器補助,入院費用などとした.16 項目の患者背景と 6 項目の治療実施状況について,治療とサブグループ間の交互作用を検証した.
7 ヵ国,138 病院の 3,723 例を調査した.90 日死亡率は,EGDT(1,852 例中 462 例 [24.9%])と通常治療(1,871 例中 475 例 [25.4%])で同程度であり,補正オッズ比は 0.97(95%信頼区間 0.82~1.14)であった(P=0.68).EGDT は,通常治療と比較して,平均(±SD)の集中治療室在室期間(5.3±7.1 日 対 4.9±7.0 日,P=0.04),心血管系補助薬使用期間(1.9±3.7 日 対 1.6±2.9 日,P=0.01)が長いことに関連していた.平均費用は EGDT のほうが高かったが,その他の項目に有意差は認められなかった.サブグループ解析により,より重症の敗血症性ショック患者(血清乳酸値が高い,低血圧と高乳酸血症の両方を認める,または予測死亡リスクが高い)でも,通常の蘇生時に昇圧薬または輸液を使用する傾向が低い病院でも,EGDT の有用性は認められなかった.
今回の個別患者データのメタ解析では,さまざまな患者背景と病院特性において,EGDT は通常治療と比較して転帰が良好であることは示されず,入院費用がより高いことに関連していた.(米国国立総合医科学研究所ほかから研究助成を受けた.PRISM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02030158)