妊娠中のリチウム使用と心奇形リスク
Lithium Use in Pregnancy and the Risk of Cardiac Malformations
E. Patorno and Others
妊娠初期のリチウム曝露が,乳児のエプスタイン奇形(右室流出路狭窄)と先天性心疾患全般のリスクの顕著な上昇に関連する可能性が懸念されているが,データは一致しておらず,限られている.
メディケイドに加入しており,2000~10 年に生児を出産した女性の妊娠 1,325,563 件を対象にコホート研究を行った.妊娠第 1 期にリチウムに曝露した児の心奇形リスクを曝露していない児と比較検討し,二次解析では,使用頻度の高い他の気分安定薬であるラモトリギンに曝露した児と比較検討した.精神疾患,身体疾患,薬物療法,その他の可能性のある交絡因子についてマッチさせた対照との比較で,リスク比と 95%信頼区間を推定した.
心奇形はリチウム曝露児 663 例中 16 例(2.41%),非曝露児 1,322,955 例中 15,251 例(1.15%),ラモトリギン曝露児 1,945 例中 27 例(1.39%)に認められた.リチウム曝露群における非曝露群と比較した心奇形の補正リスク比は 1.65(95%信頼区間 [CI] 1.02~2.68)であった.リスク比は,1 日量が 600 mg 以下で 1.11(95% CI 0.46~2.64),601~900 mg で 1.60(95% CI 0.67~3.80),900 mg 超で 3.22(95% CI 1.47~7.02)であった.右室流出路狭窄の有病率はリチウム曝露群で 0.60%であったのに対し,非曝露群では 0.18%であった(補正リスク比 2.66,95% CI 1.00~7.06).ラモトリギン曝露群を対照に用いた場合も結果は同様であった.
妊娠第 1 期における母親のリチウム使用は,エプスタイン奇形などの心奇形リスクが高いことに関連したが,その影響の大きさは,これまで仮定されてきたよりも小さかった.(米国国立精神衛生研究所から研究助成を受けた.)