急性期脳卒中における頭部のポジショニングに関するクラスター無作為化クロスオーバー試験
Cluster-Randomized, Crossover Trial of Head Positioning in Acute Stroke
C.S. Anderson and Others
急性期脳卒中後のポジショニングでは,仰臥位をとることに脳血流を改善する役割があるが,一方で誤嚥性肺炎のリスクがあるため,臨床現場ではさまざまな頭位がとられている.治療中に脳への血流を増やすため患者を完全な仰臥位(すなわち,背部は水平,顔は上向き)にすることで,急性期脳梗塞患者の転帰が改善しうるかどうかを検討した.
9 ヵ国で行われた実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験で,急性期脳卒中患者 11,093 例(85%は脳梗塞)を,仰臥位で治療を行う群と,頭部を 30°以上挙上して座位で治療を行う群に,入院した病院に割り振られた無作為割付け順に従って割り付けた.指定された体位は入院直後に開始し,24 時間維持した.主要転帰は 90日の時点での障害の程度とし,修正 Rankin スケール(スコア 0~6 で,高いほど障害が大きく,6 は死亡を示す)を用いて評価した.
脳卒中の発症から割り付けられた体位の開始までの時間の中央値は 14 時間(四分位範囲 5~35)であった.仰臥位群の患者は,座位群の患者よりも,体位を 24 時間維持する確率が低かった(87% 対 95%,P<0.001).比例オッズモデルでは,仰臥位群の患者と座位群の患者とのあいだで,90 日の時点における修正 Rankin スケール全体での障害転帰の分布に,有意な変化は認められなかった(仰臥位群における修正 Rankin スケールスコアの分布差の未補正オッズ比 1.01,95%信頼区間 0.92~1.10,P=0.84).90 日以内の死亡率は,仰臥位群の患者で 7.3%,座位群の患者で 7.4%であった(P=0.83).肺炎などの重篤な有害事象の発現率に群間で有意差は認められなかった.
急性期脳卒中後,24 時間仰臥位をとる群に割り付けられた患者と 24 時間頭部を 30°以上挙上して座位をとる群に割り付けられた患者とで,障害転帰に有意差は認められなかった.(オーストラリア国立保健医療研究審議会から研究助成を受けた.HeadPoST 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02162017)