大気汚染とメディケア集団の死亡率
Air Pollution and Mortality in the Medicare Population
Q. Di and Others
大気汚染への長期曝露が死亡率を上昇させることは複数の研究で示されている.しかし,大気汚染の程度が最新の米国国家環境大気質基準(NAAQS)より低い場合の影響に関する根拠は限られている.先行研究は主に都市部の住民を対象としており,環境や状況の異なる比較的少数派の集団の健康への影響を推定する統計学的検出力をもたなかった.
2000~12 年の米国本土の全メディケア受給者から成るオープンコホート(60,925,443 人)を設定し,460,310,521 人年の追跡を行った.検証済みの予測モデルを用いて,微小粒子状物質(空気動力学的質量中央径 2.5μm 未満の粒子 [PM2.5])とオゾンの大気中濃度の年平均値を,居住地の郵便番号に基づき加入者ごとに推定した.PM2.5 曝露量が 10μg/m3 増えるごと,オゾン曝露量が 10 ppb(ppb は 10 億分の 1 を示す)増えるごとの死亡リスクを,人口学的特性,メディケイドの適格性,地域レベルの共変数について調整した,2 つの汚染物質の Cox 比例ハザードモデルを用いて推定した.
全死因死亡率は,PM2.5 曝露量が 10μg/m3 増えるごとに 7.3%(95%信頼区間 [CI] 7.1~7.5)上昇し,オゾン曝露量が 10 ppb 増えるごとに 1.1%(95% CI 1.0~1.2)上昇した.PM2.5 曝露量が 12μg/m3 未満,オゾン曝露量が 50 ppb 未満の人年に限定した解析では,死亡リスクは PM2.5 曝露量が 10μg/m3 増えるごとに 13.6%(95% CI 13.1~14.1)上昇し,オゾン曝露量が 10 ppb 増えるごとに 1.0%(95% CI 0.9~1.1)上昇した.男性,黒人,メディケイド適格者は,PM2.5 曝露に関連する死亡リスクがその対になるサブグループよりも高かった.
全メディケア人口では,現在の国家基準より低い濃度の PM2.5 とオゾンへの曝露に関連する有害作用の重要な根拠が認められた.この影響は,人種的マイノリティまたは低所得者であると自己申告した人々でとくに顕著であった.(健康影響研究所ほかから研究助成を受けた.)