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March 9, 2017 Vol. 376 No. 10

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バベシア症後の温式自己免疫性溶血性貧血
Post-Babesiosis Warm Autoimmune Hemolytic Anemia

A.E. Woolley and Others

背景

バベシア症は,バベシア属の赤血球内原虫によって引き起こされるマダニ媒介性の人獣共通感染症であり,非免疫性溶血性貧血を特徴とするが,抗寄生虫薬投与と血中の寄生虫排除により回復する.バベシア症患者の温式抗体自己免疫性溶血性貧血(温式自己免疫性溶血性貧血 [WAHA] としても知られる)発症について,これまでに詳細な報告はなされていない.

方 法

バベシア症の治療後に発症する散発性 WAHA 症例が観察されていることから,2009 年 1 月~2016 年 6 月に当センターで治療を受けたバベシア症患者全例を対象に後ろ向きコホート研究を行った.バベシア症の診断・治療後 3 ヵ月以内に認められた血液学的合併症など,検討したい共変量に関するデータを診療録から抽出した.

結 果

7.5 年の調査期間中に 86 例がバベシア症と診断され,うち 18 例が無脾症であった.WAHA は 6 例が診断後 2~4 週間で発症し,その時点までに全例が,血中の Babesia microti の排除など,バベシア症の抗寄生虫薬投与に対し臨床反応および臨床検査上の反応を示していた.6 例全例が無脾症であり(P<0.001),直接抗グロブリン試験で IgG および補体成分 3 が陽性を示し,全例で温式自己抗体が同定された.それ以外に臨床溶血が認められた理由は見つからなかった.6 例中 4 例が WAHA に対する免疫抑制療法を必要とした.

結 論

自己免疫疾患の既往がない患者におけるバベシア症診断後の WAHA について報告した.無脾症の患者は WAHA のリスクがとくに高いと考えられた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 939 - 46. )