チンパンジーアデノウイルスベクターエボラワクチン
Chimpanzee Adenovirus Vector Ebola Vaccine
J.E. Ledgerwood and Others
先例のない 2014 年のエボラウイルス病(EVD)の大流行は,利用可能な予防ワクチンの開発を促すという,国際社会の反応を引き起こした.チンパンジーアデノウイルス 3 型をベクターとした複製能欠損組換えエボラウイルスワクチン(cAd3-EBO)は,ザイール株とスーダン株由来の糖蛋白をコードしており,非ヒト霊長類モデルで防御効果が認められたことから,速やかに第 1 相臨床試験へと進んだ.
cAd3-EBO の第 1 相用量漸増非盲検試験を行った.健常成人 20 例を,10 例ずつ,2 群に連続的に登録し,2×1010 粒子単位または 2×1011 粒子単位のワクチンを筋注した.主要エンドポイントと副次的エンドポイントは安全性と免疫原性に関するものとし,接種後最初の 8 週間を通して評価した.また,長期的な免疫効果の持続性を接種後 48 週の時点で評価した.
この小規模の試験で,安全性についての懸念は認められなかった.しかし,2×1011 粒子単位を接種した 2 例で,接種後 1 日以内に一過性の発熱が認められた.糖蛋白特異的抗体が 20 例全例で誘導された.抗体価は,2×1011 粒子単位接種群のほうが 2×1010 粒子単位接種群より高かった(4 週の時点におけるザイール抗原に対する幾何平均抗体価 2,037 対 331,P=0.001).4 週の時点における糖蛋白特異的 T 細胞応答は,2×1011 粒子単位接種例のほうが 2×1010 粒子単位接種例より頻度が高く,CD4 応答は 10 例中 10 例 に対し 10 例中 3 例(P=0.004),CD8 応答は 10 例中 7 例 に対し 10 例中 2 例であった(P=0.07).抗体応答の持続性の評価では,48 週の時点でも抗体価は高く維持されていることが示され,2×1011 粒子単位接種例では抗体価がとくに高かった.
cAd3-EBO ワクチンに対する反応原性と免疫応答は用量依存的であった.2×1011 粒子単位の接種で得られるザイール糖蛋白特異的抗体応答は,非ヒト霊長類を対象とした抗原投与試験でワクチンにより誘導される防御免疫に関連すると報告された範囲にあり,48 週の時点まで持続していた.cAd3-EBO を評価する第 2 相試験と有効性試験が進行中である.(米国国立衛生研究所の所内研究プログラムから研究助成を受けた.VRC 207 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02231866)