ANGPTL3 アンチセンスオリゴヌクレオチドの心血管系および代謝への影響
Cardiovascular and Metabolic Effects of ANGPTL3 Antisense Oligonucleotides
M.J. Graham and Others
疫学的研究とゲノムワイド関連解析により,アンジオポエチン様 3 をコードする ANGPTL3 の機能喪失型多様体と血漿リポ蛋白低値との関連が示されている.
Angptl3 メッセンジャー RNA(mRNA)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の,血漿脂質値,トリグリセリドのクリアランス,肝臓トリグリセリド量,インスリン感受性,動脈硬化に対する効果をマウスで評価した.次いで,ヒト 44 例(割り付ける用量に応じてトリグリセリド値 90~150 mg/dL [1.0~1.7 mmol/L] または>150 mg/dL)を,プラセボ群か,ANGPTL3 mRNA を標的とする ASO を単回(20,40,80 mg)または複数回(10,20,40,60 mg/週を 6 週間)皮下注射する群に無作為に割り付けた.主な評価項目は,安全性,副作用プロファイル,薬物動態・薬力学的指標,脂質値・リポ蛋白値の変化とした.
ASO を投与したマウスでは,肝臓 Angptl3 mRNA,Angptl3 蛋白,トリグリセリド,低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールの用量依存的な低下,ならびに肝臓トリグリセリド量と動脈硬化進行の抑制,インスリン感受性の増加が認められた.投与 6 週の時点で,ヒトの複数回投与群では,ANGPTL3 蛋白低下(ベースラインから 46.6~84.5%低下,すべての用量群のプラセボ群に対する P<0.01),トリグリセリド低下(33.2~63.1%低下),LDL コレステロール低下(1.3~32.9%低下),超低比重リポ蛋白コレステロール低下(27.9~60.0%低下),非高比重リポ蛋白コレステロール低下(10.0~36.6%低下),アポリポ蛋白 B 低下(3.4~25.7%低下),アポリポ蛋白 C-III 低下(18.9~58.8%低下)が認められた.ASO を投与した 3 例とプラセボを投与した 3 例で,浮動性めまいまたは頭痛が報告された.重篤な有害事象は認められなかった.
マウスでは,マウス Angptl3 を標的とするオリゴヌクレオチドにより,動脈硬化進行が抑制され,動脈硬化性リポ蛋白が低下した.ヒトでは,ヒト ANGPTL3 を標的とする同じ戦略により,動脈硬化性リポ蛋白が低下した.(Ionis Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02709850)