March 15, 2018 Vol. 378 No. 11
若年ミオクロニーてんかんで見出された腸管細胞キナーゼ遺伝子変異
Variant Intestinal-Cell Kinase in Juvenile Myoclonic Epilepsy
J.N. Bailey and Others
若年ミオクロニーてんかんにおける脳波上広汎性の多棘波を伴う痙攣発作と,微小形成不全(microdysgenesis)と呼ばれる顕微鏡で観察される微細な脳形成異常を促進するネットワークの遺伝的基盤に関する知見は限られている.
若年ミオクロニーてんかんに罹患した 1 つの大家系の 6 人の患者にサンガー法によるエクソーム解析を行い,この家系の 37 人の患者全員で共分離(cosegregation)を確認した.若年ミオクロニーてんかんの別の患者 310 例において,腸管細胞キナーゼ(intestinal-cell kinase)をコードする遺伝子(ICK)の DNA 融解曲線解析と標的リアルタイム DNA 解析を行い,変異をスクリーニングした.共分離変異のベイズ対数オッズ比(LOD)スコア,症例対照相関解析におけるオッズ比,ゲノム集積データベース(gnomAD)におけるアレル頻度を算出した.in vitro 機能解析により変異が有糸分裂,アポトーシス,神経芽細胞の放射状移動に及ぼす影響を検討し,Ick を 1 コピー欠損したマウスを用いてビデオ脳波検査を行った.
若年ミオクロニーてんかん家系の患者 12 例で変異 K305T(c.914A→C)がてんかんまたは脳波上の多棘波と共分離した.別の患者 310 例では,22 例(7%)で ICK 病原性変異が 21 種同定された.強く連鎖する 4 個の変異(K220E,K305T,A615T,R632X)は,アポトーシスを促進する一方で,有糸分裂,細胞周期離脱,神経芽細胞の放射状移動を障害した.ヘテロ接合ノックアウトマウスでは,野生型マウスと比較して,イソフルラン麻酔による浅睡眠中に,ヒトの若年ミオクロニーてんかんの発作に似た強直間代発作と脳波上の多棘波を認める頻度が有意に高かった(P=0.02).
今回のデータから,解析した患者の 7%で ICK のヘテロ接合変異によって若年ミオクロニーてんかんが引き起こされたことが明らかとなった.ICK 変異は,若年ミオクロニーてんかんにおける微小形成不全と脳波上の多棘波のネットワークを説明しうる細胞過程に影響を及ぼす.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)