H4:IC31 ワクチンまたは BCG 再接種による結核菌感染予防
Prevention of M. tuberculosis Infection with H4:IC31 Vaccine or BCG Revaccination
E. Nemes and Others
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染してまもないと,結核を発症しやすくなる.結核は世界の感染症のなかでもっとも死亡数が多い.サブユニットワクチンの候補である H4:IC31 は,前臨床モデルでは結核発症に対して防御効果を示しており,観察研究では,カルメット–ゲラン菌(BCG)の初回接種が,結核感染に対して部分的な防御効果をもつ可能性が示唆されている.
第 2 相試験において,新生児期に BCG 接種を受けた高リスク環境にある思春期児 990 例を,H4:IC31 接種群,BCG 再接種群,プラセボ接種群に無作為に割り付けた. 参加者は全員,QuantiFERON-TB Gold In-tube アッセイ(QFT)による結核菌感染検査とヒト免疫不全ウイルス検査で陰性であった.主要転帰は,安全性と,6 ヵ月ごとに 2 年間実施した QFT の最初の陽転と定義した結核菌感染とした.副次的転帰は,免疫原性と,QFT の陽転後 3 ヵ月と 6 ヵ月の時点で陰転せず陽転が持続することとした.ワクチンの有効性の推定値は,Cox 回帰モデルのハザード比をもとに算出し,各ワクチンをプラセボと比較した.
BCG と H4:IC31 はいずれも免疫原性を示した.QFT の陽転は,H4:IC31 群では 308 例中 44 例(14.3%),BCG 群では 312 例中 41 例(13.1%)に発生したのに対し,プラセボ群では 310 例中 49 例(15.8%)に発生した.陽転持続の割合は,H4:IC31 群 8.1%,BCG 群 6.7%に対し,プラセボ群 11.6%であった.H4:IC31 と BCG はいずれも最初の QFT の陽転を防げず,有効性に関する点推定値はそれぞれ 9.4%(P=0.63)と 20.1%(P=0.29)であった.しかし,BCG は QFT 陽転持続の割合を低下させ,有効性は 45.4%(P=0.03)であり,一方 H4:IC31 の有効性は 30.5%(P=0.16)であった.重篤な有害事象の発現率に群間で臨床的に有意な差は認められなかったが,軽度~中等度の注射部位反応は,BCG 再接種群でより頻度が高かった.
この試験で,結核菌の持続感染を示す可能性のある QFT 陽転持続の割合は,伝播率の高い環境では,ワクチン接種により低下した.この結果は,新規のワクチン候補の臨床開発状況を伝えるものかもしれない.(Aeras 社ほかから研究助成を受けた.C-040-404 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02075203)